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*
彼は気まずそうに黙ってしまった。
チラリ、チラリ と
周囲を見回す。
言いにくいことなのだろうか。
『ナワーブ、言いにくい、ことなら……』
「いやっ!…言う、言うから」
彼は私の方へ手を伸ばして、
顔をそむけた。
「ちょっと……待て」
手のひらの隙間から見える彼の顔は
真っ赤で、
風邪でもひいたのだろうかと思う。
やがて、彼は真っすぐに私の顔を見た。
試合の時にしか見れない
鋭い、綺麗な瞳。
「A、お前のことが好きだ。
僕に守られてくれ」
彼は私にそう言った。
いつもの様にふざけた口調じゃなくて、
真剣な口調で。
『え、と…』
頭の中が真っ白になって、
何も考えられなくなる。
私にはイライさんという好きな人がいるから、
断るのがいいはずなのに。
断ればいいのに。
ナワーブが傷つくのが嫌だ。
これ以上誰かが傷つくのは嫌だ。
ワタシの
わたしの
私の
所為で!!!
「おい、A!」
大きな声で呼ばれ、
意識が一気に引き戻される。
顔を上げると、
ナワーブに肩を揺らされていた。
『な、なに…か、な?』
「………ごめん。
そんなに思い悩む必要はねぇんだ。
Aが答えたくなったらでいいから」
私が何かを言う前に、
彼は病室から出ていった。
私はどう行動すれば良いんだろう?
どうすれば誰も傷つけないですむんだろう?
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