Side,Eli ページ15
◯
私と同じような職種についている彼女は、
とても魅力的だった。
深くかぶったヴェールで表情は窺えないが、
彼女が優しい人物であるのは間違いなかった。
「どうした、相棒」
ある日、私の相棒が夜中にほえだした。
相棒が夜に吼えることは、まず無い。
何かあったのだろうかと、寝ぼけ眼で
私は相棒のもとへ近づいた。
相棒は吼え続け、
くるりと顔を動かした。
「ん?中庭がどうかしたのかい……A?」
どんな季節であろうとここの中庭では
夜には霧が立ち込める。
不思議と気温が下がり、寒くなる。
そんな中庭にAが佇んでいた。
真っ白いヴェールを被り、
魅入られたように空を見上げている。
顔はこちらからは見えない。
ただ、哀しそうなのは分かった。
「ほぉー」
「ん、そうだね」
相棒が不安そうに鳴いた。
きっと、このままでは風邪をひいてしまうと言いたいのだろう。
同感だ。
私は直ぐに中庭まで降りていった。
話をよく聞けば、彼女は毎夜のように
中庭へ来ていることが分かった。
私の細やかな楽しみができた。
彼女の弱い姿を知っているのは私だけかもしれない。
そう思うと、嬉しくなったのはナイショだ。
◯
54人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ