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Side,Nawab ページ14
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僕の部屋はAの部屋の隣だ。
古い洋館らしく、壁は薄い。
僕がベランダに出れば、
Aの声を聴きとるのは容易だ。
『…ぐっ……ぇあっ…ひ………や』
昔の嫌な記憶に苛まれ、
ベランダに出ていた時に僕はその声を聴いた。
静かな夜を震わせる
弦楽器のような
Aの声。
「……A……?」
僕は思わず、隣のベランダへ声をかける。
ベランダには誰もいない。
恐らく、寝ているのだろう。
いつも微笑んでいるAは
自分の弱みを見せない。
………いつも隣にいる僕にでさえ。
だから泣いているのを聞くのは初めてだった。
「なんで僕じゃねぇんだろうなァ……」
Aは弱みを見せただろうか、
もしも隣の部屋が僕ではなくイライだったら。
ガチャ……と、小さく扉が開く音がした。
Aが起きたのだろう。
「どこ行くんだよ……僕のところに来いよ」
どれだけ待っても、
自分の部屋がノックされることはない。
Aが僕を頼ってくれることはない。
こんな願いは自分勝手だろう。
ごめんな
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