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*
目を覚ますと、白い天井が見えた。
少し煤けたような壁紙。
「起きた?A。背中や頭に痛みはないかしら」
『エ、ミリー先生……』
素敵なナース服を身に纏ったエミリー先生がいた。
相変わらず綺麗だな、と的外れなことを思った。
そして自分の身体が動かしずらいことに
やっと気づいた。
『エミリー…先生、私……』
「ごめんなさい、私はこれからゲームなの。
詳しいことはそこの彼に聞いてね」
エミリー先生は ふわりと微笑んだ。
意味ありげな視線を向け、
「後でお話、聞かせてね」と私の耳にささやいた。
『……彼?』
誰のことだろうと、
周りを見回し 気づいた。
さやえんどうの豆のようなフードが視界に入る。
私の手を握ったまま眠っているらしい。
『か、わいい……』
私とさほど変わらない大きさの手だ。
面白くて、もう片方の手を添えてみる。
「むうっ……A、い……くな」
『ナワーブ、大丈夫だよ〜。ほら、起きて』
ぶんぶんと自分の腕を振ると
ナワーブが身じろいだ。
「ん……A……っ!A、起きたのか」
起き上がった彼が目を輝かせ、
私の肩を抱き寄せた。
その後も「大丈夫か」を延々と呟く彼の頭を叩いた。
『ナ、ワーブ…痛い……』
「ご、ごめん……」
ナワーブは頭を下げた。
八の字に下がった眉が心底、心配させたんだと思った。
いつも近くにいるから
結構、心配させてしまったかもしれない。
「僕、お前が消えるかと思った……」
『え、と……ごめん』
「ちげーよ。お前が謝ることはない。
僕だって仕舞いたい過去の一つ、二つ……数えきれねぇくらいある」
ナワーブが顔を上げ、
私の顔を見た。
腕を伸ばし、
私の頬をするっと撫でた。
「だからな…」
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