ににの彼女はテミナペン-7- (ページ33)

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夏休み-東京-7 ページ33

「日本人は行列に並びたがる」だとか、「日本人は横入りを嫌う」だとか、そんな話を聞いたことがある

それこそ、よくテレビでKpopアイドルが「日本のファンはマナーが良い」って言ってるし

それをいま目の前で実感しているんだけど

『どうしよ、ににっ』

俺のユカタの袖をきゅっと握って、目の前の行列に怯える彼女

学園で毎日行列を作られてるAでも、さすがに外国人となると怖いよな

JI「大丈夫、俺が守る」

少し汗ばんだ頬を手で包み込み、目を合わせれば泣きそうになるんだから、

俺が守らなきゃ、って強く思うんだ

それを見た人集りから歓声が上がる

パフォーマンスじゃないし、Aはアイドルなんかじゃないのに...

「あの、私日本語少し話せるんです
私たちのせいで注目されちゃったので、何か助けられたらな、なんて...」

さっき写真を撮ってくれた人たちが、心配そうに声をかけてくれて

『私たち、有名人じゃないです
一般人だし、高校生なので写真は困ります
そう伝えてもらえますか...?』

Aがお願いすると、その人は人集りに向かって通訳してくれる

それを聞いた人たちが徐々にはけていく...と思ったら

やって来た、サイトで見た"ハッピ"ってやつを着たおじさん

Aと手を強く握り合って、やって来るおじさんから一歩ずつ距離を置く

「あの、この後イベントに参加していただけませんか?
お祭りで行うベストカップルコンテストがあるのですが」

話しかけてきたのはおじさんの隣にいる女の人

「この方はお祭りの実行委員長で、私はアサクサの観光案内所の通訳です」

俺たちが怪しんでいるのを感じ取って自己紹介してくれた女の人

『ベストカップルコンテストだって』

「優勝されるとハコネのペア旅行券が貰えます」

JI「ハコネ?」

『温泉じゃない? ガイドブックで見た気がするよ』

温泉...

JI「出てみる?」

温泉はどっちでもいいけど、これに出たらもっと楽しい思い出になるんじゃないかな

俺たちの初めての旅行だし

『初めての旅行だもんね、楽しい思い出作りたいよねっ』

「出てくれますかっ!!」

急に手を掴んできた女の人

いや、それはやめてくれ...

『出ます、けどににはわたしのっ』

掴まれた手を自分に引き寄せた彼女

JI「何時からですか?」

女の人から詳細を聞いて、それまではもう少しお祭りを楽しむことに

JI「A、行こっか」

また指を絡めて屋台の道を歩き始めた