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彼の呟きは私に向けられたものというより、途方に暮れた独り言に聞こえた。
私の部屋の壁紙と、彼の部屋の壁紙が、境目できれいに切り替わっている。まるで最初からそう作られたかのようだ。そんなはずないのに。頭が回らない。
その時、スマホのアラームが鳴った。
反射的に私たちの視線がそちらに向く。
ベッドサイドの充電器につないだままの、私のスマホだった。
はたと気付く。引っ越し先からの初出勤で遅刻しないようにと、アラームを2回かけておいたんだった。今のアラームは、『この時間に起きなきゃ遅刻するぞ』用だ。
小走りでスマホをとり、アラームを止める。クローゼットの境目に座ったままのヒョンジンさんは、まだ困惑の色が残る顔で私を見上げていた。
「あの、すごく言いにくいんですけど……、私もう仕事に行かないといけなくて……」
その言葉にヒョンジンさんもはたとポケットからスマホを取り出し、「あ、僕ももう出ないと、」と歯切れ悪く言う。
「……」
「……」
「一旦、閉めますね」
「はい、僕も、」
結局なんとも言えない空気感のまま、お互いクローゼットの扉を閉めた。
扉が閉まると、本当につながっているのかと疑問に思うくらい、部屋には静寂が戻った。
頭がこんがらがったまま身支度を整え、コートを着込んで鞄を持ち、もう一度クローゼットの前に立つ。
ちょっと待って。本当にこのまま出掛けていいの。
10秒ほど悩んで、引っ越し段ボールをまとめるために用意していたビニール紐で取っ手を何重にも縛った。取っ手を引っ張って、開かないことを確認する。
もしあの美青年が悪党で、仕事に行っている間にクローゼットが荒らされてしまったとしたら、その時はその時だ。
念のためビニールテープをもう一重巻きつけて、私は部屋を出た。
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菜々(プロフ) - 続きが楽しみです。更新されるの心待ちにしています🥲 (3月20日 17時) (
レス) @page45 id: 6590863194 (このIDを非表示/違反報告)
に - いつか更新されますように。 (2月2日 0時) (レス) @page45 id: 832e916a41 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 初めまして。この作品を読んで癒されて、思わず一気読みしてしまいました！本当に好きなお話で続きがとても読みたくて思わずコメントしてしまいました。更新を楽しみにしています。 (1月26日 21時) (レス) id: 055f1baafa (このIDを非表示/違反報告)
夜明 - すごく面白かったです！次の更新が楽しみです！ (1月15日 21時) (レス) @page45 id: 9cb33f84df (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - 初めまして！このお話好きすぎて心が癒されました。少しずつでも更新楽しみにしてます。 (1月3日 1時) (レス) @page45 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：gigi | 作成日時：2023年3月7日 21時
