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そうだ。時間。私も少し慌ててスマホを探すと、ベッドサイドのテーブルに伏せて置かれていた。時刻は6時半を回ったばかりで、ほっと胸を撫で下ろす。
「よかった、間に合う……」私の独り言を耳ざとく拾ったヒョンジンが、「え?」と怪訝な顔になった。


「今からシャワー浴びても仕事間に合うなって、」

「もしかして、仕事行こうとしてる?」

「う、うん」

「はあ……熱測って」


溜息とともに有無を言わさず持たされた体温計を渋々脇に挟む。気まずい時間が流れて、ぴぴぴぴ、と検温が完了した音が鳴った。「見せて」私が確認するより先に彼が手を差し出すから大人しく渡すと、厚い唇を不満げに突き出した彼がディスプレイの文字を読み上げる。


「37.4℃」

「……ギリ平熱?」

「じゃないでしょ。休めない仕事?」

「ちょうど山場は越えたところだけど……」
だからこそ気が抜けて、溜まっていた疲労が一気に襲ってきたのだろう。残タスクはあるけれど、今日でないといけないものはなかったはずだ。

ヒョンジンは「じゃあ休も」と、枕元にある私のスマホをとって手渡してくる。会社に電話しろ、ということだろう。
確かに、この体調で行って菌をばらまくより、家で大人しくしていたほうがいいか。
彼に促されるまま、上司の番号をタップする。上司は私が体調を崩すなんてよほど珍しくて驚いたのか、今日どころか明日も無理しなくていいと言った。電話口の上司には見えないのに頭を下げて謝罪とお礼を伝え、電話を切る。「お休みもらった」言葉はわからずとも雰囲気で伝わっていたのだろう。「ん、よかった」と言って彼は立ち上がる。


「おかゆとゼリー、あとヨーグルトもあるけど、何か食べれる?」

「んー…おかゆ」

「わかった。キッチン借りるよ」

「うん」


やってくれるんだ。
キッチンへと向かう背中をぼうと眺める。そうだ、顔洗ってこよう。
ゆっくりとベッドから立ち上がると、途端にずきっと頭が痛み、めまいがした。これは仕事どころじゃないな。彼の言う通り休んで正解だった。

少し冷たい水で顔を洗うと頭がすっきりした。顔色も昨日よりはだいぶマシになった気がする。

洗面台から体を離し、自分の姿を見る。鏡に映る私は見慣れない服をまとっている。長袖のTシャツと、ゆったりとしたスウェットのズボン。ヒョンジンの服だ。
きっと私を起こすのも忍びなく、だからといってクローゼットを漁るわけにもいかず、自分の部屋から持ってきてくれたのだろう。


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菜々(プロフ) - 続きが楽しみです。更新されるの心待ちにしています🥲 (3月20日 17時) (レス) @page45 id: 6590863194 (このIDを非表示/違反報告)
- いつか更新されますように。 (2月2日 0時) (レス) @page45 id: 832e916a41 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めまして。この作品を読んで癒されて、思わず一気読みしてしまいました!本当に好きなお話で続きがとても読みたくて思わずコメントしてしまいました。更新を楽しみにしています。 (1月26日 21時) (レス) id: 055f1baafa (このIDを非表示/違反報告)
夜明 - すごく面白かったです!次の更新が楽しみです! (1月15日 21時) (レス) @page45 id: 9cb33f84df (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - 初めまして!このお話好きすぎて心が癒されました。少しずつでも更新楽しみにしてます。 (1月3日 1時) (レス) @page45 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:gigi | 作成日時:2023年3月7日 21時

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