01 ページ1
.
恋人と別れたから引っ越しをした。
元々、私が一人暮らししていた部屋に彼氏が住み着く形で始まった同棲だった。
半年経った頃から帰ってくるのが遅くなり、時々連絡なく外泊するようにもなった。そのあたりから怪しいと睨んではいたけれど、まさか私が出張でいない間に女の子を連れ込むなんてテンプレートのような愚行をしてくれるとは。思い返せば、付き合う前から女癖の悪さには薄っすら気付いていた。きっと私には一途でいてくれるなんて愚かな期待をしたバカ女は、浮気をされて初めて目が覚めたのだ。
玄関にあった女の靴を窓から放り投げると、女の子だけ出ていかせようとするから、お前も出てけ！と彼氏の靴も投げた。その後、彼の荷物を実家に送り付けたら、どこから事情を聞いたのか、彼のお母さんから謝罪の連絡があった。お母さんは良心的なひとだったから、少しだけ心が痛んだ。
目が覚めたとき、知らない天井が目に飛び込んできて、一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
ああ、引っ越したんだった。見慣れない内装がまるで非日常に飛び込んだようで、寝起きにも関わらず気分が浮上する。
昨日入居し、一日で大半の荷物の整理を終わらせ、眠りについたのが深夜。
思いのほか疲れはたまっていない。むしろ、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
ベッドから降りると少し肌寒い。早く起きれたし、コーヒーでも飲もうかな。
カーディガンを肩にかけ、コーヒーマシンで淹れたブラックコーヒー片手にベランダに出る。今日は天気がいいから、遠くの海がよく見える。熱いコーヒーを一口飲むと、少し冷えた体にじわりと染みた。
我ながらいい部屋見つけたものだ。
南向きという日当たりの良さ。小さいながらも対面式のカウンターキッチン。ベランダから見える海。築浅で建物もあまり傷んでいない。
そして何より、ウォークインクローゼットがついている。
1.5畳ほどで特別広いわけではないけれど、一人暮らしには十分すぎる容量だ。洋服に鞄や靴、それから掃除用具や備品などを全て仕舞ってもまだ余裕がある。といっても、半年もすれば空きスペースなんてほとんどなくなるだろう。始めは少ない荷物も時が経つにつれて収納に合わせた量に増えていくものだから。
……前に住んでいた部屋で荷物が多かったのは、甲斐甲斐しくあの男の物も一緒に仕舞っていたからというのもあるけれど。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
菜々(プロフ) - 続きが楽しみです。更新されるの心待ちにしています🥲 (3月20日 17時) (
レス) @page45 id: 6590863194 (このIDを非表示/違反報告)
に - いつか更新されますように。 (2月2日 0時) (レス) @page45 id: 832e916a41 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 初めまして。この作品を読んで癒されて、思わず一気読みしてしまいました！本当に好きなお話で続きがとても読みたくて思わずコメントしてしまいました。更新を楽しみにしています。 (1月26日 21時) (レス) id: 055f1baafa (このIDを非表示/違反報告)
夜明 - すごく面白かったです！次の更新が楽しみです！ (1月15日 21時) (レス) @page45 id: 9cb33f84df (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - 初めまして！このお話好きすぎて心が癒されました。少しずつでも更新楽しみにしてます。 (1月3日 1時) (レス) @page45 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：gigi | 作成日時：2023年3月7日 21時
