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36. 余韻 ページ36

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視界に映る見慣れない部屋。
目を覚ました布団の乱れ具合が、
昨晩の出来事が夢ではないことを思い知らせる。

ともに眠っていたそこに彼の姿はない。


障子を通して入ってくる太陽の光が
薄暗く部屋の中を照らす。

思いがけず関係の形を変えた昨日を思い返しては
恥ずかしいやら嬉しいやら
いずれすることになるであろう皆への報告への懸念やらで
私の頭は鉛のように動かない身体と相反して慌ただしく働いていた。


「コレまたとんでもねェ百面相でィ」


不意に影ができた部屋に入口を見やると
襖に凭れかかって沖田くんが立っていた。

手には竹刀をもって
既に一汗かいてきた様子。


「はよごぜーやす。Aサン」

つかつかと歩み寄ると
当たり前のように
ぷちゅっと唇に触れる彼の唇。


「…んな、朝から何…っ」

「ちなみにこれ今日2回目でさァ
つっても、昨日さんざんやっといて
慣れてねェAさんの方が変ですぜ」

「うるさいなあ!私の天真ぶりを嘗めないで!
これでも…「恋人ができるのは初めて?」…う、」

そう、図星だよ。沖田くん。
縁談さえ来ててもおかしくない歳なんだけどさ。

間近で見る沖田くんの顔はやっぱり涼やかで
にやりと笑って私を見つめる彼に
簡単に顔を赤くしてしまう、そんな自分の初心っぷりが恥ずかしい。



思わずうつむく私の中で、
意図せず浮かんでしまった考えは、
言いたくもないことを言葉に紡いでしまう。


「そういう沖田くんは」

「ん?」

「…そういう沖田くんは、
もう初めてなんてないんでしょ」

「当たり前でィ」



…驚きはしない。

わかってはいたけど、
彼くらいの容姿ならば今まで女性経験の一つや二つない訳がない。

別に知りたくなかったのになぁ



「…嫉妬?」

「‥‥俗世ではそういうかもしれないけど」


いや、我ながら見苦しすぎる。
もう喋んないで私の口。


「うそ」

「え?」

「嘘でさァ。
公務員は忙しいんでねィ
芋から始めてこの方、そんな暇ありやせんよ」


安心してくだせェ、と
含み笑いを零す彼に
またしてやられたと芽生える悔しさ。

そんなものも丸ごと包み込むのは安堵だったりする。


「俺の大切な“初めて”は
これから全部Aさんに押し付ける予定でさァ」

「私の尊厳がない」

「我慢してねェで喜びなせェよ素直に」


綻ぼうとする口元を
悔しさもって封じ込めようとしていることすら
彼にはお見通しのようである。


「〜〜〜、馬鹿ぁ」



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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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みけ(プロフ) - 笛さん» 毎度ありがとうございます^^ 沖田くんメインで書いてるので、銀さんには少々我慢して頂いてますw (2021年2月19日 21時) (レス) id: 85e7eab2a4 (このIDを非表示/違反報告)
- 今回の更新最高です!!!銀さんがかわいそうな気がするけどwwww (2021年2月19日 20時) (レス) id: bff55455ee (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 笛さん» ありがとうございますっ!お待たせしております。ただいま予定が立て込んでますゆえ、もう少々お待ちください…! (2021年2月10日 18時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
- 毎日寝る前に更新チェックしてます!!!! (2021年2月10日 1時) (レス) id: bff55455ee (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 笛さん» コメントありがとうございます!わたしの文章でそう感じていただけることが幸の極みでございます…!精進いたします! (2021年2月7日 20時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:人魚ちゃん | 作成日時:2019年2月14日 4時

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