全てはお見通し【第五人格】 (ページ5)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:3,545 hit

４ページ5

ドルイドの忠告を無視した結果、もたらされた罰。

本来ならば死に直面するような出来事が起こっても悪くない中、その罰は恩恵を失うだけの軽いものに留まった。

突然聞こえなくなった声と、視えない事への焦り。
与えられた物をさも当然だと思っていた自分への苛立ち。

命の代わりになるには軽いかもしれないが、私には十分重過ぎた。

まさか彼女が形ある物にしたためてしまうとは思いもよらなかったが、間接的に破られたからこそ軽い罰で済んでいるのかもしれない。

勿論、次の予言を蔑ろにすれば、間違いなく命はないだろうと薄々気付いていた。

それでも、この恩恵を手放す訳にはいかなかった。
例え本来自分の物でないとしても。

彼女と、そしてフクロウが、
定められた未来も変える事が出来るのだと教えてくれた。

失われた恩恵が、フクロウが自ら片目を閉じる事で戻ってきたのだ。

以前にも増して私に寄り添う事が多くなったフクロウ。
彼女は私が罰を受けてしまわないよう、絶えず片目を瞑り続けてくれている。

それでも招待は受けなくてはならない。
招待を受けた私を、生涯独り身で待ち続ける彼女の未来も視えてしまった。

喜びと同時に困惑した。
彼女の未来を、帰ってくるかも分からない男を待ち続けるだけの人生にしても良いものかと。

確かに私は彼女を手離したくなかった。
だからと言って縛り続けて良い理由にはならない。

『あなたの望む未来を叶えて』

それはドルイドではなく、フクロウ自身の声だった。
絶えず寄り添い続けてくれている彼女のためにも、私はそれに応えなければならない。

断腸の思いで彼女に別れを告げて、エウリュディケ荘園からの招待を受けた。

未来が分岐した。

彼女がどこかで幸せになってさえくれれば、
私はそれで満足だ。

想いを断ち切るように、振り払うように
それでもいつかここから出る未来を夢見て

荘園に足を踏み入れた。