全てはお見通し【第五人格】 (ページ2)

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意識を取り戻した時、まず目に入ったのは古ぼけた洋館だった。

周りを森で囲まれているらしいその荘園は、古ぼけているものの所々明かりが灯っていて、人がいることを証明している。

夕刻、あと少しで日も暮れそうな時間に、既に暗闇に呑まれかけている鬱蒼とした森に入る勇気は私にはなかった。

森に入るには、危険かもしれない。
そうなると取れる行動は一つしかない。

しかしインターホンらしきものも見当たらなければ、周囲に人気も一切ない。

鞄に入っていた携帯も電波を拾ってくれず、
着のみ着のまま右も左も分からない私は、徐々に焦燥感を募らせていた。

不意に聞こえた鳥の羽ばたく音と鳴き声。
音の発生源を辿ると、そこにいたのはフードの付いた真っ黒なローブを身に纏い、固そうなグローブを着けた手を差し出して梟を迎え入れる男性の姿だった。

彼は腕に留まった梟に何やら声を掛け、労うように人差し指で撫でると、迷いもなくこちらを振り返る。

驚いた様子もなく、まるで分かっていたと言わんばかりの態度で私に声を掛けてきた。

「困っているようだね。もう日も暮れるから、一先ず中に入ると良い」

目元は布で覆い隠されていて、表情がよく分からない。
重たそうな鉄格子のような門を少し開けた彼は、内側から“どうぞ”と入るように促す。

状況を把握しきれない今、一先ずお世話になるしかないのは分かっている。
それでも私から見れば常識的にあり得ない身形をした彼に若干不信感を覚えるし、人見知りの気も相まって言葉が喉につっかえてしまう。

狼狽えていても刻一刻と夜は迫っているし、彼を頼るしかないのは誰が見ても明らかなのに、私はあ、とかう、とか言葉にならない声しか出せなかった。

次第に風は強まり、誰かの叫び声のように聞こえた。

怖い、
恐い、
こわい

後ろではほの暗い森が口を開けて待ってる。

狼狽え戸惑いを隠せない私に彼はふと口元に笑みを浮かべ、開けた門を抜けて私に近付いてきた。