【氷菓】季節外れの新入部員 (ページ9)

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♯９　　―spade ページ9

「湖山さーん。」

走り終えた湖山を里志が呼んだ。

湖山は振り返る。
そして里志が手を振ってるのを見てめんどくさそうに歩いてきた。

「速いね、湖山さん。」

俺達の近くまで来ると湖山は立ち止った。

「…アリガト。」

湖山は棒読みでそう言った。
言葉の割には嬉しくなさそうだ。

「いやー、改めてもったいないと思うよ。
　才能は発揮してこそ意味があるっていうのに。」

里志が普段通りにいう。

「才能を発揮して…何のメリットがあるっていうんだか。」

「ん？なんか言ったか、湖山。」
「何も言ってねぇよ。空耳じゃね？」

湖山がそう否定した。
その直後「ボール投げやるぞ」と先生が声をかけた。
今日は他にも長距離などもやるだろう。

・

・

「いやー、ハンドボール用のボールは投げにくいね。」

投げ終えた里志が言う。
「そうだな。」と俺は相槌を打った。

「湖山さん、ボール投げも飛ぶのかな？
　ね、ホ―タロー。」
「知るか。」
「それにしても、長距離嫌だなぁ。
　男子と女子で長さが違うのは酷いと思わないかい？」
「ひどいも何も中学校でもそうだったろ。」
「そうだけど…。」

そんな話をしてる間にも
「おぉー。」という歓声が聞こえる。

遠くまで飛ばせる人限定だ。