【氷菓】季節外れの新入部員 (ページ23)

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♯２３　―star ページ23

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私と綾丘未朝が出会ったのは
中学１年の初衣替えをしてから２，３週間後のことだった。
やっと学校生活にも慣れたかな～、って頃彼女はやってきた。
何の前触れもなく唐突に彼女はやってきた。

ある日のホームルームのことだ。
出席簿などを持って先生が入ってきて開口一番

「転校生がこのクラスにやってきました！」と
八百屋が宣伝するかのように大声で言った。

先生に連れられて入ってきたのが綾丘未朝、彼女だった。

中学生としての生活が始まってわずか２カ月と少しというのに転校してきた彼女の為に私達は１時間かけて自己紹介をした。

名前、出身の小学校、所属する部活、得意な科目、苦手な科目、
将来の夢、趣味、最後に一言。

と、まぁこんな流れだった。

私は確か…

『湖山A。中原小出身で陸上部に所属してます。あ、趣味は走ることです。得意な科目は国語で苦手な科目は数学です。将来の夢は…未定です。』

これに似たようなことを言ったはずだ。

未朝の自己紹介はこちらもうる覚えだが確か…

『綾丘未朝です。卒業した小学校は北上小学校です。部活は…陸上部に入るつもりです。趣味というか…ランニングをよくします。得意な科目は…英語かな？で、苦手な科目は理科と社会とぉ…数学です。将来の夢は…考えたことがないです。よろしくお願いします。』

というような内容だった気がする。

私達は席が遠かったから関わりは全くなかったが
つなげた事柄があった。それが『陸上部』だ。

私はこのクラス唯一の陸上部で彼女は陸上部に入部する気だったから…。

彼女が転校してきた初日の放課後私は彼女に初めて話しかけられた。

「陸上部だよね？わたし陸上部、入部希望なの。
　よかったら…あんないしてもらっていいかな？」

ふわふわした感じの子だった。
第一印象は「あ、苦手な子だ」と思ったことを今でも覚えている。

「あー…。いいよ。案内するよ。」

彼女はそれだけで満面の笑みだった。

その日の部活で私は彼女が長距離派だってことを初めて知った。

短距離と長距離
種目が違うのに何故か私達は仲良くなっていた。
気がつけば移動教室も一緒に移動してたし休み時間も一緒に過ごしてたし、
給食も隣に居た。

「友達になろう」なんていう言葉はこの世代にはいらないのかもしれないな、と思ったことを私は覚えている。