【氷菓】季節外れの新入部員 (ページ21)

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♯２１　―spade ページ21

「それで、その未朝さんって人は転校した中学校で陸上部に入り
　湖山さんと仲良くなった。ってことだね。」
「あぁ。しかし、これだけじゃ湖山が陸上をやめた理由にはつながらん。」

だね、と里志は椅子の背もたれに背を預けるようにだらけながら言った。

「本人には聞けないの？」

「今どちらにいらっしゃるのか…。」

千反田がそこまで言った。
そして、遅れていた部員湖山が入ってきた。

「…何だその顔は。全員して私の顔を見て…。
　何かついてんのか？」

そう言いながらも湖山は指定席に座る。

「いえ、そういうわけではないです。」

千反田がそういうと湖山は口角を少し上げて

「嘘はいらねぇよ。廊下にまで聞こえてる。
　未朝の話だろ？印字中だったからな、千反田は知ってると思ってた。」

湖山はやっぱりいつも通りに言った。

「仲良かったんですか？未朝さんと…。」

湖山は天井を見上げた。

「うん、まぁ、それなりに。」

俺は窓の外の景色を見た。
あの少し髪が長く高いところで１つに束ねているのは…星蘭だったか？
長距離が得意だっていう…。
…長距離？

…未朝という人物を知っているだろうか？

―――――――――

翌日、俺は昼休み自販機に行った。
どういう偶然だろうか。

昨日の部活で名の上がった星蘭がいた。
というか俺が１人で名を挙げさせてもらっただけなのだが…。

「星蘭…さん。」

落ちてきた飲み物を拾い上げた星蘭という人物は俺の声で振り向き
「誰？」と言った。まぁ、普通の対応だ。

「１年Ｂ組折木奉太郎だ。」
「ふーん、で？何か用でもあったの？折木サン？」

缶を開けて星蘭は言った。

「未朝、という陸上選手を知っているか？」

単刀直入すぎただろうか？
しかし、星蘭の反応は大げさだった。缶の中をのぞいて缶を回すように振っていたのに未朝、という名を聞くと缶を止め俺の方を見た。

「何で…その名前を…？あんた陸上経験者ですカ？」
「いや、古典部だ。」

へぇ、初耳。と星蘭は言った。
ライバルの湖山が所属してる部活だぞ？

「…で、その名前を私に聞いて…どうしたいの？」
「教えてほしいんだ。その人のことを…。」
「ナンデ？あんたには関係ないんでしょ？」

言われると思っていたさ。そんなことぐらい…。