【氷菓】季節外れの新入部員 (ページ20)

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♯２０　―spade ページ20

湖山が持ち歩いてる写真に書かれている『A』と『未朝』の文字。
A、と書かれている時点でもう片方も名前と考えたほうがいいだろう。

その未朝という名の人はおそらく、というか約８０％以上の確率で陸上部員。
もしくは陸上部員だった可能性がある。

あの写真は湖山が陸上部に居たころの写真で陸上部での活動最中にとったものだと俺は勝手に思っている。
その写真で他の部活というのは珍しいだろう。

ということを後日部活中に里志にしたら帰ってきた返答がこれだ。

「でもさホ―タロー、それで湖山さんが陸上をやめたことと何が関係してるって言うんだい？」

ごもっともだ。文句なしの解答だ。

しかしいいことを聞いた。

「未朝さんですか？」
「何だ千反田。知ってるのか？」

俺は冗談で言った。
いくら顔の広い千反田でも知らないだろうと俺は踏んでいたのだ。
しかし、

「知ってます。人違いかもしれませんが『ミアサ』という名の方は知ってます。」

見事に期待は裏切られた。
いや、いいことなのだが…。

「何でも知ってるのね、ちーちゃん。」
「いえ、同じ中学だったんです。途中で転校してしまいましたが…。」
「へぇ、転校っていつしたんだい？」

里志、その質問には何か意味があるか？

「たしか…１年の夏だった気がします。」
「ずいぶん早いのね。」
「引っ越ししたんです。
　それで印地中よりも近い学校があるというので転校したと先生がおっしゃっていました。」

「その未朝という人物について少し聞きたいのだが…。」
「未朝さんは陸上部のお方でした。」

どうやら俺が求めてることと千反田が教えてくれることは同じ内容らしい。

「長距離が得意で体力検査ではぶっちぎりだったのを今でも覚えてます。」

思い出すかのように千反田が言う。

「短距離も速かったのですが本人は長距離派だとおっしゃっていたのを聞いたことがあります。」

盗み聞きでもしたか？

「湖山さんとは逆だね。」
「あぁ。短距離と長距離は筋肉の付き方が違うとか違くないとか聞いたことがある。」

姉貴からだが…。
ダイエットするのどっちがいいと思う？という話で姉貴が語っていた。