【氷菓】季節外れの新入部員 (ページ15)

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♯１５　―spade ページ15

「では、そろそろお開きにしましょうか。」

という部長の言葉で俺達は続々と地学準備室を出ていく。
伊原は鞄の中を確認して「うん」と言って先に部屋を出た。
里志も巾着を持ちかえ出ていく。
千反田は鍵を閉めるため扉の脇で待っている。
湖山は鞄を持ちめんどくさそうに扉に向かう。

扉に向かう途中、湖山の鞄の外ポケットから生徒手帳が落ちた。

「あ…。」と、湖山が声を漏らす。

普通本を落としても開いて着地はしないだろう。
しかし、生徒手帳は薄い。
更に表紙と１ページめの間に何か分厚いものを入れておくとその面を上に着地することがまれにある。そのまれにある現象が今俺の前で起きた。

俺の足元に落ちた湖山の生徒手帳を俺は拾い上げる。
挟まっていた何か分厚いものの正体は…

「写真？」

生徒手帳に入るぐらいのサイズの写真だった。
それには文字が入っていた。…名前だろうか？
俺が拾い上げると湖山が

「あ、拾ってくれてありがと。」と言ってさりげなく俺の手から奪い取った。

湖山が持っていた写真の真ん中に居るのは湖山だ。相変わらずのショートカットがトレードマークか。
他はその湖山の横でピースをしているのは…誰だ？

…知るわけないか。あの体育着はここ神山高校のものじゃない。
鏑矢中のものでもないとなると俺の知ってる学校じゃないだろう。

「さて、帰るか。」
俺も地学準備室から出た。

あの写真…背後にあった高跳びの道具
湖山が空いてる手で持っていたメジャー
湖山の隣に居た人が持っていたストップウォッチ
並べてある少し高めのハードル
写真を撮った場所は陸上競技を行うタータントラック…。
陸上競技用のものだと里志が前に言っていた気がする。
ということは陸上関係者との写真ということか…。

何故、陸上をやめたはずの湖山が陸上部の写真を持ち歩いている？

…。写真を持ち歩いていてもおかしくないか。