【氷菓】季節外れの新入部員 (ページ11)

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♯１１　―spade ページ11

里志が核心に触れた。

「湖山さん、どうして陸上やめちゃったんだい？」

その直後の湖山はどこか寂しげの気がした。

「どうしてって…んなもん『飽きちまった』っつう私の勝手だけど？」

嘘だ、そういう前に「女子―、集まれー、長距離やるぞ―！」という先生の声。

湖山は「んじゃ、私女子だから」と歩いて行ってしまった。
ショートカットを耳にかけて歩いて行った。

「意外と嘘つくのは下手かもしれないね。」

里志が湖山が立ち去った後にそう言った。
「かもな。」と俺は相槌を打つ。

湖山はスタートラインに沿って並ぶ２つの列の内前列に立ちまた、軽く準備運動をしていた。
他の女子は「マラソンとか、いやー。」と言い合っているが湖山は１人黙々と準備運動を進めていく。
本当に１人が好きなんだな…。
そんな湖山に話しかける人物がいた。

「あー、あれはえっと…名前忘れちゃった。」

里志がデータベースには珍しく記憶していないというのだ。

「でも、長距離が速いっていうのは有名だよ。
　湖山さんをライバル視してるのも有名だよ。」

有名なのか、
俺は初耳なのだが…。

その有名な人物が湖山に話しかけているが湖山は適当にあしらっている。
勝手にライバル視されてるのが面倒なのだろうか？

「ホ―タロー、穴があくほど湖山さん見てるけど、なんかあったかい？」
「え？…あ、いや、別に何も…。」

見ていたかも知れんが、
穴があくほどは見てないぞ里志。