9話 ページ9
何も言えず立ち尽くしていると、禰豆子が振り向き手を差し伸べてきた。俺はその行動の意図が読めずにいると
「手、繋いでやってくれないか?Aと繋ぎたいみたいだ」
暴れだしそうな感じはせず、それどころか幼子にも見えるそのしぐさに恐る恐る手を差し出すと、それを嬉しそうに彼女は握った。
「さっき、標にお堂があるって書いてあったから、そこを目指そうと思う。たぶんもうすぐだから、そこで一休みしよう」
炭治郎は禰豆子の手を取り、禰豆子は俺の手を握ったまま3人で暗い山道を歩き出す。
「やっぱりお堂があるぞ、明かりが漏れてるから誰かいるみたいだけど、行こう」
しばらく歩いていると薄ぼんやりと、木の間から光を見つけてそこへと駆け寄るとようやくお堂を見つけることができた。
俺が始めて通った時は気づかなかったなときょろきょろしていると、炭治郎が足を止めた。
「血の匂いがする!!この山は道が険しいから誰か怪我をしたんだ!!」
言いながら走り始める彼と手がつながったままの俺たちは繋がったまま走り彼が勢いよくお堂の戸を開ける。
「大丈夫ですか…!!」
すると目に飛び込んできたのは、赤く染まった部屋と、そこに横たわる血を流した人達。
だがその中でも目を惹いたのは、目を充血させ口の周りに血をつけた奴だった。俺たちが戸を開けたというのに、それに動揺するそぶりも見せず床に放り出された腕を拾い上げむさぼっている。
ようやくこちらに気付いて何かを言っているようだが、頭がそれを受け付けず右から左へと流れていく。
おかしい。悪夢でも見ているような感覚だ。
人のような形に見えるが、でもどうしてだか目の前にいる血にまみれた奴が人間じゃないととわかる。
「お前ら、人間か?」
その声にぐらついていた思考が引き戻されたと同時に、風がすり抜けていく。
今しがた目の前にいた男が、一瞬で目の前からいなくなり驚いて振り返ると炭治郎がソレに向かい斧を振り上げているところだった。
「炭治郎!!」
急いでお堂から出ようとするが体がガクリと後ろに引き戻される。
「離してくれ!」
繋いだ手を離すように言うが、禰豆子はその言葉に反応せず、口元からだらだらと涎を垂らしていた。
俺は叫びまくった、彼女が手を離すか同じ行動を起こしてくれるまで何度も何度も何度も何度も。
すると彼女はハッとしたように俺の手を離し、とことこと外へ走り出すと炭治郎に覆いかぶさっている男の頭を蹴り飛ばしたのだった。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時