17話 ページ17
その日の夜、夕飯の材料を切っていると、ころりと手元から芋が逃げ出し、床にころころ転がった。
大事な食べ物を落とすだなんて、ばあちゃんに見られたら張ったおされる所だった。
戸の方へと転がっていった芋を拾い上げようと手を伸ばした時、突然戸がガタガタと大げさな音を立る。
俺は芋を拾って、それを手にしたまま、戸に手をかけて勢いよく開けると、手から、芋がぽろりと落ちた。
「炭治郎!?」
音の正体は、炭治郎だった。
彼は戸の前でうずくまり、ぴくりとも動かない。
俺はとにかく彼を家に入れた。
今鱗滝さんは肉を買いに行くと言って外出している。飛び出して、彼を早く帰るように言うこともできるかもしれないが、
俺はここに来て一度も町に行ったことがなかった。鱗滝さんは人離れしているとしか言いようがないほど足が速い。
彼が遠くに行っているかもしれないことを考えると、今炭治郎を一人残して、家を飛び出すのは無謀としか言えないだろう。
炭治郎を布団に寝かせて体の状態を見る。
息はしている、けど意識は混濁しているようで、こちらの問いに反応しない。
体は傷だらけで、羽織を脱がせようとすると、痛みがあるのか、朦朧としているというのに激しく暴れた。
「ごめん!痛かったよな…!肩が痛いのか?!ほかに痛いところないか?!」
反応はない。
俺はふと手にまとわりつく生ぬるさを感じ、視線を落とす。
手は真っ赤だった。
何時ついた。炭治郎を家に入れた時か、それ以外だと羽織を触っただけだ。
炭治郎へと視線を戻すと、肩口、そして太ももに接触している布団がじわりと赤く染まっていき、
体から、さっと血の気が引く感じがした。
……嗚呼、やはり神様は残酷だ。
彼から家族を奪った挙句、彼まで連れて行こうというのか。
俺はいつも使っている薬箱を戸棚から出し、包帯を取り出して患部をきつく縛り上げる。
医者を、医者を呼ばないと…じゃないと死んでしまう…
死んでしまう
死んでしまう
死んでしまう
「何事だ!!」
俺が家を飛び出そうとすると、開け放たれた戸から入ってきたのは鱗滝さんだった。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時