誤解1 ページ37
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待ち合わせに間に合うように仕事を終わらせて、待ち合わせ場所へと向かった。
すると、懐かしい人が駆け寄ってくるなり自分に抱きついてきた。思わずよろけそうになるが、きちんと抱き留める。
「レイ!久しぶりね。元気してた?」
「シャロン、久しぶり!!いつ日本に?」
「たった今よ。早く会いたくてレイの職場に来たってわけ」
「ほら、ここは日本だから挨拶でもキスはしない」
「いいじゃない。久しぶりだったんだから」
「はいはい。日本は仕事で?」
「だから貴方に会うためよ」
「それだけのためにわざわざイギリスから?」
「それだけって…暫く連絡もくれないし!可愛い甥っ子に会うためなら距離なんて関係ないわよ」
シャロンは自分の叔母にあたる。40代後半なのに、20代、30代前半に見えるほどの美貌の持ち主である。
自分にとって唯一の身内だ。結婚をしていなかったシャロンは、中学生の時に両親を亡くした自分を引き取ってくれた。そして、シャロンが住むイギリスへ渡ることになり、大学は日本と決めていたので四年後、日本に戻ってきた。
自分の子供のように可愛がってくれた大切な人の一人であり、最後にイギリスへ帰ったのは大学を卒業した時で、約7年前になるだろうか。仕事が始まると忙しくてそれどころではなかった。そろそろイギリスへ帰ろうかと迷っていたときだったので一足早く会えて嬉しく思う。
「はは、連絡のことはごめん。俺も夏休みに帰ろうと思ってたところでさ」
「それならわざわざ来る必要無かったじゃない」
「でも、一足早く会えて嬉しいよ」
「冗談よ。ねえ、今夜食事行かない?」
「ああ、ごめん。この後予定があって」
「何、彼女とデート?」
「まだ付き合ってはないけど、そんな所」
「へえ。私に紹介してちょうだい」
「まあ、彼女がいいって言ったらいいけど…あ、いた。ちょっと待って」
食事に誘われたが自分は大事な先約があるため、断ろうとしたら紹介するように言われた。倭が良ければ紹介しようと思い、待ち合わせにいるはずの倭を探すと、ゆっくりと歩くショートヘアをした倭の後ろ姿を見つけ、名前を呼んだ。
「中西さん」
『……』
「中西さん、待って」
『離して!』
名前を読んでもこちらを振り向こうとしない。何事かと思い片方の手を握ったら振り解かれてしまった。
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ベルモットこと、シャロン・ヴィンヤードは降谷さんの叔母として登場です。
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作者名:ゆきだるま | 作成日時:2018年5月26日 8時