向日葵2 ページ31
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-降谷零side-
jazz喫茶で倭が曲を奏でた。jazzピアノ特有の艶かしさに加え、表情や鍵盤を叩く白くて細い指、全てにおいてそそられるような感覚に襲われる。会うたび会うたび倭に対する思いが強くなるのがわかり、油断すれば倭に手をだしかねない。
ピアノを弾き終えなんとか冷静を取り戻す。
今日は倭を連れてドライブに行き向日葵畑に行こうと考えていた。
行き先は告げないまま行きたい所があると言って倭をドライブに誘う。行き先は告げてないので不思議そうにしながら《いいですよ》と返事をしてきた。それならば、早速行こうと飲み物を飲み終えた時にに立ち上がり、店長に挨拶して会計を済ませてから車を取りに戻る。
店の前で待っていた倭を車に乗せて、目的地である向日葵畑へと車を走らせた。
2時間ほど車を走らせて県外のとある向日葵畑へとやってきた。今がピークなのか向日葵は太陽に顔を向けて綺麗に咲き誇っている。
車を降りた倭はソワソワと無邪気な子供のような様子で向日葵を見ていた。普段は年齢相応の落ち着きのある倭だったがこんな、子供みたいな一面を持っているなど、新たな一面を発見する。
『こんなに楽しくてワクワクするの久しぶりです』
「中西さん、子供みたいに大はしゃぎですね」
『え、子供みたい?!』
「変な意味では無くて、素敵だなって思ったんです。綺麗な物に純粋になれる中西さんがね」
『よ、よくそんな恥ずかしいこと言えますね』
「すみません…思ったことはすぐ口に出してしまう癖があって」
『その言葉は大切な人に伝えると喜んでもらえると思いますよ?』
倭は随分鈍感な人だと感じる。その大切な人に素直な気持ちを伝えているつもりだった。
旦那に浮気されて、傷つき離婚に至った倭。もしかしたら、もう傷つかないため異性に対して壁を作っているのかもしれない。その壁が厚ければなかなか振り向いては貰えないはず。それでも倭に自分の気持ちに気付いてもらうため、自分の本当の想いを伝えていくつもりでいた。
不安定で広い畑の中を、倭が転ばないように時折支えながらゆっくりと歩いていく。
『そう言えば、3カ月前は本当にお世話になりました。降谷さんがいてくれたから私、立ち直れたし吹っ切れたんだと思います』
「そう言ってもらえて嬉しいです。……そろそろ日も暮れてきましたし、帰りましょうか」
「そうですね」
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作者名:ゆきだるま | 作成日時:2018年5月26日 8時