予期せぬ再会2 ページ11
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-降谷零 side-
「本日はありがとうございました」
『中野さん、こちらこそありがとうございました。とても有意義な会議でした』
「次回も有意義な会議になるよう、よろしくお願いします」
「本日の会議内容は風見にきちんと引き継ぎます。僕は今回代理でしたので、次回は参加できないかと思いますが、いずれまた」
『降谷さん、引き継ぎよろしくお願いします。そして沢山の貴重なご意見をありがとうございました。また色々練り直して今日より良い物を作っていきたいと思います』
「期待しています。それでは失礼します」
個々で軽く挨拶を済ませるなり、エントランスホールまで見送られて自分達は会社へと戻った。会社へ戻りながら今日の事を考える。
今朝、出勤してからすぐに中野から連絡が入り、今日の会議へ参加するはずだった風見が体調不良のため急遽休む事になり、代理として会議に参加して欲しいと言われた。今日は重要な会議も仕事も入っていないため、大丈夫だろうと判断し急いで向かう事を伝えた。
(体調管理も出来ないなど情けない)
大事な日なのに体調を崩す風見に思わず軽くため息が出てしまう。
別なプロジェクトを抱えていたが、中野と風見らが保険会社との共同プロジェクトにも興味があり軽く情報は得ていた。だから自分が呼ばれたのだろう。
急いで電話で指示されたパソコンのデータファイルから会議の案内文や企画書類をプリントアウトする。時間と場所を確認するために、案内文をみれば会議参加者欄に《南波倭》という名前がある事に気づいた。
『南波倭です』
彼女が以前そう名乗ったのを思い出した。漢字はわからないが、倭という名前は珍しく同一人物で間違いはないだろう。
もう二度と会う事はないと思っていたのに、倭が保険会社の商品開発課でプロジェクトリーダーを勤めていると言うことがわかった。先程まで侮蔑してしまった風見に静かに感謝する。急いでエレベーターに乗り込み一階のボタンを押す時に松田も乗り込んできた。
「松田か」
「おう。今日は?」
「風見が体調不良で会議に出られなくてな。代理で俺が先方に出向く事になったんだ。松田は営業回りか?」
「大変だな。俺は営業からのクライアントと会う予定。忙しくて嫌んなるぜ」
「そうでもない。俺は楽しみだ」
「なんで?」
「気が向いたら話すよ」
「なんだよ、それ」
「じゃあな」
エレベーターから降り、松田を置いて早足で駅へ向かった。
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作者名:ゆきだるま | 作成日時:2018年5月26日 8時