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別にそれが悪いっていうわけじゃないんだけど……という前置きをすると、彼女はこちらを向きなおした。
「もし受験を意識するんだったら、英語を英語のままで読む練習をした方がいいかなあって。」
なんて言えばいいのかな。訳さないで、頭の中で映像をイメージするの。そうしたらもっと早く、書いた人の意図通りに読めるようになるよ。
話している内容は勉強に関することなのに、何故か彼女は楽しそうに笑った。
ずしん、と頭が重くなる。
正直言って、勉強はそこまで苦手ではない。
クラスでもテストの点数は良い方だと思う。
担任からも、授業にこそ出てはいないが、仕事と勉強を両立できているし、このままなら大学の推薦だって狙えると言われた。
けれど、こうして真正面から勉強に向き合ってきた人には敵わない。
真面目に真っ当な人生を歩んできた人と話すと、自分の人生はなんなのだろうかと――俺の人生は誰かのための見世物なのだろうか、エンターテイメントになるために生まれてきたのだろうか、というある種の葛藤に苛まれる。
こういう感覚を抱いたのはこれが初めてではない。
今まで何度だって味わってきた。
仲のいい奴が事務所をやめるとき。
一緒に並んで踊っていた人がグループに入った時。
高校受験に向けてクラスの奴らが一生懸命単語カードをめくっている時。
俺の人生は何なのか。これでいいのか。
俺が一人暮らしを始めてすぐ、夜の街に繰り出すようになったのは、結局そういった悩みを忘れたかったからなのだと思う。
大人の真似事で足を踏み入れた場所。
いつしかそれは「自分は何者なのか？」という問いが出ないことの逃げ道になっていった。
皆と同じように、渡されたグラスに口をつけたあの日のことを思い出す。
甘いような、少し苦いような、よく分からない味。
喉を通る冷たい感覚とくらくらとする頭。
どんどん上がっていく体温。
子どもが手を出してはいけないと分かっていながら、何かを変えたくて試してみたけれど、本当に何もかもが変わってしまった。
その一方で、彼女はきっと、俺と全く違う「普通」で「優秀」な道を歩んできたに違いない。
俺の気持ちは共有できない。
俺はなんだかここにいるべきではないような気がした。
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れお(プロフ) - あさん» 初めまして。コメントありがとうございます。例の件に触れているため、あまり読んでもらえないだろうと思っていたのですが、そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。 (2020年8月28日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。例の件について触れている事で低評価を押されている方がいらっしゃるのかもしれませんが、とても素敵で面白い作品でした。ありがとうございます。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 7cf7088bde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作成日時：2020年6月18日 15時
