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マネージャーが奴と同じようなことを口走った衝撃から思わず目を見開く。
同時に、え、と声が漏れ出てしまった。
けれど相手は大人だ。
動揺する俺をたしなめるかのように、少しずつ話を続けていく。




「それは、猪狩の言ったお金の問題も勿論ある」




でもな、でも、でも、とマネージャーはいくつも逆説を重ねる。
どうやら、自分の考えを表すに相応しいフレーズを探しているようだった。
でも、でもと更に二つ逆説を重ねると、これだ、という表現が見つかったらしく、一気にきりりとした表情になりこちらを向きなおした。




「それ以上に、ハイハイという一つの大きな装置を動かすのに、二人は必要な歯車なんだよ」




歯車。
何かを動かすためのパーツを意味する言葉だ。




俺はグループを動かすためだけに生きているのか?
俺自身として生きてはいけないのか?




やっぱり、アイドルなんて見世物だ。
ファンの人から「好き」と言われても、そこに強い気持ちなんてない。
表面的な俺しか見てくれていない。
誰も、俺をその人にとっての「特別な一人」には選んでくれない。




そんな人生を、俺はこの先ずっと生き続けなくてはいけないのか?




そう考えているうちにも、マネージャーはどんどん話を進めていく。
全く耳になんか入ってこない。
仕事の内容なんかじゃなくて。年内の過ごし方なんかじゃなくて。世論なんかじゃなくて。
俺はもっと、「俺」について考えてほしいのに。



結局、この話し合いの中で覚えているのは「来月の頭にもう一回事務所に来て、改めて話をしよう」ということだけだった。



事務所から出た時にはすっかり暗くなっていた。
生暖かい風を受けながら、夜にしてはやけに明るい都会の街を歩く。
俺は早く彼女に会いたかった。

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作品ジャンル:タレント
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れお(プロフ) - あさん» 初めまして。コメントありがとうございます。例の件に触れているため、あまり読んでもらえないだろうと思っていたのですが、そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。 (2020年8月28日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。例の件について触れている事で低評価を押されている方がいらっしゃるのかもしれませんが、とても素敵で面白い作品でした。ありがとうございます。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 7cf7088bde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れお | 作成日時:2020年6月18日 15時

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