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久しぶりに見たマネージャーは30代半ばの働き盛りの男性とは思えないほど、どこか疲れ切った顔つきになっていた。
どうして、と一瞬思ったがその原因の種が自分であることにすぐ気が付いた。
流石の俺もそこまでばかじゃない。
俺は少しだけ心苦しくなった。
まあ、座って、と言われ目の前にある無機質な事務用椅子に腰かける。
そういえばここで動画を撮影したこともあったっけ、と考えつつ顔を挙げた。
マネージャーは極めて冷静で、俺に家や学校での様子を尋ねてきた。
そこには俺を気遣う優しさがあった。
けれど、今の俺はそれに純粋に溺れられるほどの余裕はなかった。
「そういえば、猪狩と、優斗が作間に会いに行くって言ってたけど、会った?」
「いや、優斗には会ってないんですけど、がりさんには会いました」
ありゃ?優斗は結局行かなかったのかな、とマネージャーは訝しげに首をひねる。
俺はあの日のことを、少しだけ後悔していた。
夜空に響いた言葉。
あの時は、それを言わなければ何も始まらないと思っていた。
もっと言えば、何かを変えようと行動を起こさないと、このまま自分の中から何かを抜かれ、見世物の人形のようにされてしまう気がしていたのだ。
けれど、もしかしたら俺はあれを言うべきではなかったのかもしれない。
そんな俺の様子を感じ取ったのだろう、マネージャーは優しい声色で、何かあったのか?と聞いてきた。
「……俺、がりさんにひどいこと言っちゃったかもしれなくて」
話すべきことではないかもしれない、とも思った。
けれど、今の俺一人では、あの日の夜のことは抱えきれなかった。
俺は9月30日の夜のことを、全てマネージャーに話した。
全てを聞いたマネージャーは神妙な面持ちで、うーんと唸ると、言い難いことを告げるように、少しずつ話し始めた。
「正直に言うと、事務所の意向としては、作間と橋本には戻って来てもらうつもりだ」
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れお(プロフ) - あさん» 初めまして。コメントありがとうございます。例の件に触れているため、あまり読んでもらえないだろうと思っていたのですが、そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。 (2020年8月28日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。例の件について触れている事で低評価を押されている方がいらっしゃるのかもしれませんが、とても素敵で面白い作品でした。ありがとうございます。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 7cf7088bde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れお | 作成日時:2020年6月18日 15時