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家のインターホンが鳴る。
Aちゃんだと思うから出てあげてーという叔母さんの声を聞きつつ、扉を開いた。
どうも、といつも通りのゆるふわ女子大生スマイルを浮かべた彼女が立っていた。
栗色の髪はいつも通り緩く巻かれていて、服装はブルーレーベルのチェック柄のドッキングワンピース。足元は小さなリボンのついた黒いバレエパンプスで、耳にはケイトスペードの小ぶりなピアスがついていた。
勿論、彼女はいつだって綺麗な身なりをしていたが、それにしても今日は格段ときちんとした格好だった。
「ハッピーバースデー」
開口一番におどけてそう言う彼女は少しだけかわいらしく見えた。
*
今日くらいはAの家庭教師も休業かと思いきや、誕生日だからと言って勉強しない理由にはならない、という一言で早速いつもの勉強体制に入った。
ローテーブルを挟む俺と彼女。
Aは少し居心地の悪い俺を無視し、淡々と授業の準備をすすめていく。
その様は、俺に向かって「ハッピーバースデー」と言ったのを忘れたかのようだった。
目の前に突きつけられたのも、当たり前に積分のプリントで。マジか、と思いつつも、文句を言ってもどうにもならないことが分かっていたから俺は手を動かすしかなかった。
「これ、いつも通り制限時間10分だよね」
俺も彼女のペースに合わせて「いつも通り」を進めようとする。
しかし、彼女はそんな俺を「ちょっと待って」と遮った。
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れお(プロフ) - あさん» 初めまして。コメントありがとうございます。例の件に触れているため、あまり読んでもらえないだろうと思っていたのですが、そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。 (2020年8月28日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。例の件について触れている事で低評価を押されている方がいらっしゃるのかもしれませんが、とても素敵で面白い作品でした。ありがとうございます。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 7cf7088bde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れお | 作成日時:2020年6月18日 15時