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9月30日。


学校から帰ると叔母さんは忙しそうに台所に立っていて、俺の姿を見とめるや否や「今日は美味しいもの沢山作るからね」と声をかけた。



あの日、Aが階下に降り、俺の誕生日のことを叔母さんに告げると、またもや「なんでそんな大事なことを教えてくれなかったの!!?」問い詰められた。
そして俺が返事をする間もなく、やれケーキがどうのこうの、やれ夕飯がどうのこうのと話は進んでいき、めでたく俺の誕生日パーティーが開かれる運びとなったのだ。



台所に立つ叔母さんは揚げ物の最中で、まるで絵本の中の食卓のように、他にも沢山の料理が既に用意されていた。
思えば、こういう「いかにも」な誕生日を過ごしたのは人生でこれが初めてかもしれない。



多くの人がそうであるように、俺の誕生日もまた日常の些細なイベントの一つに過ぎなかった。



実を言うと、俺は、あまり自分の誕生日が好きじゃない。
いつもより多くLINEの通知が鳴り響き、いつもはあまり会話をしない人からも声をかけてもらえる日。



でも――いや、だからこそ、おめでとうと言われる回数やプレゼントの数で俺の人間性が量られているような気がして、居心地が悪いのだ。
それはまるで――舞台の上に立ち、大勢の観客の目線を集め、見世物のようになっている時と同じような孤独感。
皆が「俺」を見ているはずなのに、俺の知ってほしい「俺」は誰も見ていないような気がして、それがどうしようもなく気持ち悪い。



そういえば去年の誕生日はあいつ――優斗と大雨の中バッティングセンターに出かけたっけ。
どうして去年の俺は折角の誕生日に男同士で男臭い遊びをしたんだろうか、と今なら思うが、それと同時に、バカなことをやっている方が、気が紛れていいなあという気持ちもあって。
なんだかんだ俺にとって、5人でいる時間はそれなりに居心地がいいものだったのかもしれないと、ふとそんなことを思った。

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作品ジャンル:タレント
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れお(プロフ) - あさん» 初めまして。コメントありがとうございます。例の件に触れているため、あまり読んでもらえないだろうと思っていたのですが、そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。 (2020年8月28日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。例の件について触れている事で低評価を押されている方がいらっしゃるのかもしれませんが、とても素敵で面白い作品でした。ありがとうございます。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 7cf7088bde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れお | 作成日時:2020年6月18日 15時

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