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「それにしても、どうして突然居候を始めたの?」
去年の雑誌に載ってるって言うことは、親の仕事の都合で海外にいて云々っていう話はフェイクでしょう?と鋭い洞察と共に彼女は俺に問うた。
こうなったら嘘をつく意味がなくなってしまう。
俺は今に至る経緯を一から――それこそ、公式発表では明らかにされていない部分も含めて説明し、原因の写真を彼女に見せた。
「なるほどねえ……それにしても、この写真、って……」
「まあ、アレだよね。寝てたら撮られてたんだよね」
「撮られてたって、そんな呑気な……ていうかこれ、飲んでるよね?」
「さーあ、どうでしょう?」
俺がそう誤魔化すと、彼女はうわー不良だーと言ってケラケラと笑った。
俺はAのこういうところ――優秀で、誰もが羨む道を歩んでいるくせに、しょうもないことを楽しめるところが好きで、でも一歩引いたような立場にいるような声色が俺を少しだけ苛立たせた。
「Aはお酒、飲まないの?」
「うーん、飲まないねえ」
「大人、なのに?」
「年は大人だけど、お酒あんまり得意じゃないから」
Aにも得意じゃないことあるんだね、と俺が言うと、彼女はそりゃあるに決まってるでしょと頬を膨らませた。
小学生みたいなやりとり。
今まで忘れていた、まるで初恋のような感覚。
勿論、これが年上に対して抱く感情ではないことは知っているけれど――俺も彼女のように、嫌味のない良い意味での子どもらしさを持ちたいと思ってしまった。
「……そもそも本質的には大人どころか、まともな人間でもないのかもね」
「え?」
「いや、うーん、まあ、私はどうしたって大人にはなれないってこと!」
急に真面目な表情になって呟いた言葉。
彼女は笑って誤魔化したけれど、それが俺の頭から離れなかった。
――本質的には大人どころか、まともな人間ではない。
その眼差しはやっぱり、大人の女性のそれで、過去に何かがあったことを匂わせてきて。
どうしたって俺と彼女には3歳の年の差があるのだということを突き付けられたような気がした。
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れお(プロフ) - あさん» 初めまして。コメントありがとうございます。例の件に触れているため、あまり読んでもらえないだろうと思っていたのですが、そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。 (2020年8月28日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。例の件について触れている事で低評価を押されている方がいらっしゃるのかもしれませんが、とても素敵で面白い作品でした。ありがとうございます。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 7cf7088bde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れお | 作成日時:2020年6月18日 15時