第33話 ページ35
貴女「…で、どうしよっか。ほんとにそろそろヤバくなってきたよ」
さっきも話していた通り、兵達がこちらを探しに来るのも時間の問題だ。
…ややあって、ミンスが口を開いた。
覚悟した、という顔で。
ミン「私が逃げ道を確保します。お三方はこの城から脱出して下さい」
貴女「……」
ハク「それは…」
ミン「緋龍城はスウォン様が率いてきた兵とスウォン様を支持する兵が集まりつつあります」
…まぁ、知ってたよ。うん。←
ハク「捕まれば間違いなく殺される…か」
貴女「だろーね。手加減はしない野郎共だ」
ヨナ「どこへ…行くの…?」
…お姫さん?
木にもたれかかり座ったまま、ヨナ姫はぽつり、ぽつりと思いを言葉にした。
ヨナ「私…宴の時……父上が泣いて喜んでいたのに一言も言わなかったわ…ありがとう……って。
ここは父上の城よ…父上を置いて…どこへ…どこへ行くというの…?」
未だ涙が止まらないヨナ姫の言葉に、ソン・ハクの顔が苦しげに歪んだ。
ギュッ。
お姫さんの小さな身体は、ただまっすぐに彼女を想う青年によって包まれていた。
ハク「どこへでも行きますよ。あんたが生きのびられるなら。それが陛下への、想いの返し方です」
ーしばらく二人はそのままだった。
貴女「…さ、お姫さん。辛いだろうけど、そろそろ立って。ミンスが裏山に出られる門まで案内してくれるって」
ヨナ姫は無言で立ち上がった。
〜〜〜
ミン「ここから裏山に出られます」
ハク「ああ」
すると近くで、兵の声が聞こえた。どうやらこの辺りを探しに来たらしい。
貴女「…ミンス。あんたお姫さんの身代わりになるつもりじゃないよね?」
ミンスはためらいがちに笑った。
…それが答えだった。
ミン「姫様、どうかご無事で」
ヨナ姫がミンス!と小さく叫んだが、ミンスは着物を被り走り去る。
「いたぞ、あっちだ」
ーミンスが、兵に認識された事が、その声でわかった。
ヒュッ…
武術に聡いあたしにははっきりと聞こえた。矢をつがえ、放つ音が。
多分、ソン・ハクにも聞こえただろう。
(…ミンス……………)
…次にヨナ姫が振り返った時には既に、ミンスは敵の矢に倒れていた。
やがてその姿も、裏切りの闇に溶けて消えた。
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ひじり(プロフ) - 設定とか色々好きです!!更新待ってます!!!! (2021年6月14日 1時) (レス) id: a9637b57df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心太 | 作成日時:2018年8月26日 6時