第27話 ページ29
雅な音楽が、水紋のように広がる。
その演奏が少しだけ激しい曲調に変わったのを皮切りに、あたしは扇を顔を隠すように構えた。
しゃん、しゃんと奏でられる涼やかな音に合わせてクルリと回ったり、扇を投げて捕らえたり。かなり適当な自己流だったが、まぁ許してくれ。
一応、あたし今から死ぬ設定なんで。
舞台の上からチラッと下を見ると、ヨルガさんと目が合った。そして、小さく、コクリ、と頷いた。
ーそれが、合図だった。
あたしは精一杯息を吸い込み、叫んだ。
貴女「あたしは甘っちょろいお姫さんの為だけに、この命を捧げたくない! 贄がなんだ、脱出してやるよ! こんな制度、クソ喰らえだ!
ーいいかお姫さん、この場にいるのなら耳かっぽじってよーく聞いておけ。
お前が一体幾人の民に生かされているのか知っているか? 幾人の犠牲の上に、己のちいさな世界の安寧が保たれているのか、果たしてきちんと理解しているのか?
もしそれすらも分からない
そこまでひと息に言い切ったあたしは、ぜぇ、と荒い呼吸をした。
ーまだ、ここからだ。くたばるな。
自分に言い聞かせ、あたしを捕まえようと押し寄せる兵士達をあしらわなければならないのだ。
丈の長いのをいい事に、服の中に仕込んだ短剣を2本、シャっと抜いた。
短剣でも二刀流でいくのがあたしのスタイルだ。
…まぁ、大抵1本しか使わないけどさ。
貴女「…さて、と。
もう一仕事、いきますか!」
あたしは駆け出した。
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ひじり(プロフ) - 設定とか色々好きです!!更新待ってます!!!! (2021年6月14日 1時) (レス) id: a9637b57df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心太 | 作成日時:2018年8月26日 6時