海賊少女は鈍感さん？ (ページ28)

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第26話ページ28

しかし、あたしはその様子を見て、すっかり閉口してしまった。ヨナ姫が、ものすごく幸せそうな笑みを浮かべていたのだ。

(…いいのか？あたし…あの娘、すっごい幸せそうだぞ？そんだけ、大事な奴なんじゃないのか？お姫さんにとって、スウォン様っていうのは…)

あたしは葛藤していた。
たしかに、暗殺の手伝いは引き受けた。
でも、あんなに信頼しきっている幸せそうな表情(カオ)をされると…。

調子が、狂う。

貴女「…クソッ……」

あたしはだんっ、と木に八つ当たりした。
それ以上、見ていられなかった。

苦しくて、辛かった。

今から、ーあの娘の運命を、あたし達が変える。

王妃様がいないから、ヨナ姫にとっては唯一の肉親が国王とも言える。
そして彼女が慕うスウォン様も、きっと変わってしまうだろう。

お目通りの時に見せた、へらへらして優男なだけのスウォン様ではなく、いざとなれば、現国王の許していない戦にも打って出る国王になる気がする。

ーすべては、この国を、強くするために。

そんな意図があるように思えたから、スウォン様に従う事にしたのだ。自分の意志で。

それならさ、スウォン様。

そんなもの、あげる必要ないじゃない。

お姫さんが悲しむの、わかんないの？

ヨルガ「おーい、贄ー、どこ行ったー。そろそろ出番だぞー」

っと、こんな時に出番かよ。

貴女「ここだよー、ヨルガさん」

一言返事をしてシュタッと木から飛び降りる。
舞なんて、ましてや暗殺計画のためのかく乱なんてしたくない時でも、体は素直に動く。困ったものだ。

ひゅっと吹き抜けた一陣の風に、思わず振り返る。

静かで、冷たく重い風。

あたしにはそれが、あの3人にこれから起こることを示唆しているように感じられた。

静かで、しかし確かな変化の時はー。

もうすぐそこに、迫ってきていた。