最終戦直前 ページ1
深海棲艦、暗黒艦隊が連合を組んで早くも1年、深海棲艦の進行が始まって８年。ようやくこの終わりが見えない戦いに終わりが見えて来た。各国の陸海空軍は総力戦へと持ち込み、ゲリラ戦を展開したり大艦隊、大編隊で総攻撃を仕掛けたり、占領された島々へ海兵隊を送り込み再占領。終いには飛行場、及び軍港に停泊中の敵機や艦艇を一機残らず破壊尽くしていき��奴ら”に対する怒りをあらわにする一方、列強は続々と撃退をしていった。そして、日本政府も対深海棲艦・暗黒艦隊戦の最終戦として、��国家存続総力法��が発行され、砲弾や重油、鋼鉄の加工を最優先とし、一早く敵を潰す。という法律だった。一部の国民は何となく��国家総動員法��に似ていると感じた。だが、家族を爆撃隊に殺され、故郷を離れることになった多くの国民は、��国家存続総力法��なんて、あの日に比べると平気であった。
‐‐‐鎮守府・作戦室‐‐‐
「提督、この戦いに終止符を打たなければなりません。」
「デハ、モウアノ作戦シカアリマセンネ...」キング・ジョージ5世が顎に手を当てながら言った。
「あの作戦って何だよ兄上？」プリンス・オブ・ウェールズが首を傾げる。
「だが、其れには莫大な戦費に戦力が必要...うかつに出れば、甚大な被害が出る。」山本五十六が俯きながら話した。
「このままで良いのですか⁉欧米はもう敵を蹴散らしています！我々だけ取り残されては世間の笑いものです！」野田晴彦が感情的になって五十六に問い詰めた。
「野田、それは考えが浅い。もっと物事は広くとらえるべきだ。今此処で総力を挙げれば、確かに行けるかもしれん。」
「では...！」野田晴彦が話しているところを割って入り、期待感あふれる声で五十六を見つめたが、五十六は首を縦に振らなかった。
「目と鼻の先の考えでは如何にもならん！事を起こすには必ず『時期』というものがある。もうしばらく待とうではないか...まぁ、決号作戦は発令、少数艦隊の出撃を命ずる。」
「長官の命令ならば仕方ありません...」
「山口さん、お願いだ。」山口多聞を読んで耳を近づけるように言った。
「何だ？」そう言って多聞は五十六に耳を近づけた。その声は外部は勿論、大勢の高官が居る司令部にも聞こえなかった。そして多聞はコクリと頷いた。武藤章(むとうあきら)少将が、何を指示した、と聞くと五十六は、二航戦は一・五航戦と共に出撃しろと命令を出した、とだけ言った。武藤は其れを聞くと
「そうか...」と言い天井を見上げた。
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作者名：伊吹 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sea
作成日時：2022年5月23日 20時
