メスガキ後輩とデンジくん ページ2
「はじめましてっ！デンジせんぱい…で合ってます？」
ぴょこぴょこ跳ねるように動くちっせぇ女。
今日はパワーの代わりにこいつとバディを組むようにってマキマさんに言われて…
「そうだけど、お前名前は？」
「鬼桜Aです！気軽に下の名前で呼んでください…ね、せんぱい？」
顎に指を当てて小首をかしげてみせるA。
つられて視線が口元に動いて、ぷるぷるとした唇を見ていられなくて目元に目を向ける。
じぃっ。
その視線は俺が知ってるどんな女のそれより熱っぽい。
(あれ？こいつ俺のこと好きなんじゃ…)
だんだんそんな気がしてきた。
もしも目の前にいるのが俺に惚れてる女だったら…。思考が膨らんで急に気恥ずかしくなってくる。
「お、おーう！よろしくなA！」
視線を合わせるのが辛くなって熱くなった頬を隠すようにきびすを返して歩き出した。
Aは後ろから小走りで着いてきた。
トコトコと効果音が聞こえてきそうなほど歩幅が狭い。
それだけ俺より小さいってことだ。
「もぉ、デンジせんぱい速い〜！」
Aはすねたように言うと、走ってきて俺の手をぎゅっと握る。
どき、と心臓が跳ねて一瞬足が止まる。
その隙に隣にぴたっと並んだAは俺の顔をのぞきこんでニコッと笑う。
「手、つないだまんまでいいよね？」
もちろん答える余裕など無く、俺は無言で手を握りしめたまま止まっていた足を動かす。
心臓のバクバクは全然おさまらなくて、周りの音なんて少しも聞こえない。
ちらり、と隣を盗み見るとAはなんともないみたいににこにこと歩いている。
いったいどうなってんだ…。
Aが俺のことを好きなはずなのに、振り回されてるのは俺の方な気がする。
もやもやとした気持ちが広がって、それをかき消そうと頭を思いっきり振る。
Aはびっくりしたようにこっちを向いて、
「えっ、どうしたんですかせんぱい。とりあえずむね揉みます？」
「………え？」
「えぇ？」
長い沈黙。
Aから視線が逸らせないまま聞こえてきた言葉を脳が処理していく。
揉む？…なにを？
………むね？
……………いいのか？？？
「…はぁ。しょうがないせんぱいですね〜？」
世界は途端にスローモーションになった。
Aがこちらに手を伸ばす。
細くてやわらかい指先が俺の手首を掴む。
そのまま俺の手はAに引き寄せられて…
ふにっ
「………ぁ」
「ふふ、えっちぃ」
鼻の奥が熱く、目の前が真っ暗になった。
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作者名：胡蝶蘭 | 作成日時：2023年1月2日 7時
