貴方でした4（赤） (ページ12)

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その日はそのまま帰った。

後日、直筆で謝罪コメントをあげたと言うニュースを見た。

彼の中の何かが変わったならいいな。

私も負けてらんない。強くならなきゃ。

忙しなくも充実した日々。

私は今日もまっすぐ彼に向けて歌う。

ショーの合間に、お客さんに
“あなたの歌声はいつも誰かに届けているよう。
　聞いているだけで、その人がどんな人か分かる。
　きっと大切で素敵な人なのね。”

と、言われた。

私は笑顔で
「そうなんです。素敵で不器用で…大切な人なんです。」
と答えた。

大倉くんからも連絡が来て、
すばるくんが少し落ち着いたってホッとしてた。
大倉くんの役にも立てたのかなと、少し嬉しくなった。

それから、数ヶ月後だった。

私はいつも通りバーに立っている。

今日は真っ赤なドレス。
いつも以上に綺麗だねなんてお客さんに言われて
彼のイメージカラーを着て褒められたことが嬉しかった。

お客さんと軽く談笑をし、曲を歌おうとした時だった。

入口の方から、ハットを深くかぶって
少しオーバーサイズの古着を着かなした彼が入ってきた。

私の心臓はドクンと大きく波打った。

来てくれたんだ…

彼はまっすぐ私を見ている。

いつもの痛いくらい真っ直ぐな眼差しで。

あぁ、涙が出そうになる。

でも、もう私は泣かない。

彼の目を見ながらニコッと微笑み

「今日は来てくれてありがとう。聴いてください。」

そう言い、歌い始めた。

すばるくん、届いてるかな？

私の気持ち。

あなたに出会って、私強くなったよ。

2曲を続けて歌うと、今までにない拍手喝采。
私自身もびっくりした。

「ありがとうございます…」

感極まって泣きそう…。

「私は、自分に自信がなくて…
　いつも下ばかり向いて生きていました。
　私なんて私なんて…って。

　でもまずは自分が自分を好きていなくてはいけない事を
　大切な友人たちに教えてもらいました。」

ひとみや、やすくん、亮ちゃん…大倉くん。

みんながいつもそばにいてくれたんだよ。

「そして、幸せになってもらいたい人たちに出会い
　その中でも私は、自分の手で幸せにしたいと
　思えるような人に出会いました。」

そこでまた拍手が起きた。

「男勝りなことを言っていますが…」

ハハっと少しの笑いが起きる。

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