貴方でした4（赤） (ページ11)

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す『ちょ、離せや。お前にこんな事してもらえる資格ない。』

「別れようなんて私言わない！！」

私の大きな声に驚いたのか、体がビクッとしている。

「ごめん…ごめんね。すばるくんが辛い時に1人にして。」

彼に抱きついたまま私は続ける。

「どうしちゃったのすばるくん…。すばるくん…。」

私はぎゅっと彼の服を掴む。

泣かないって決めたのに、彼の体が華奢になっていて
彼の放つ空気が冷たくて、心配で…
気付いたら私が泣いていた。

「すばるくんを嫌いになるわけない。
　私が弱かっただけなの…お願い…自分を責めないで…」

特に彼は何か言っては来なかった。

もちろん抱き返す事もない。

ただ、私の背中に置いた手が温かくて。
それだけが伝わってきた。

す『分かったから、離して。』

しばらくした後すばるくんが呟いた。

「ごめん…久しぶりに会って…」

す『テレビでも見たん？』

「…うん。」

す『それで心配なったん？』

「…うん」

す『あれが本当の俺やで。
　もう全部どうでもええねん。
　何もかも。どうでもええねん。』

「なんで…」

す『何やってもうまくいかないからじゃ！
　真面目に生きたって、なんも！
　何やってももうしょうもないねん！』

ドンっ！と机を叩く音に、私はびっくりする。

す『こんなアホみたいなやつに関わらん方がええで。
　大倉ならお前のこと支えられる。』

そう言って机を叩いた手を
これでもかってくらい強く握りしめている。
爪が食い込んで血が滲んでいた。

初めてのすばるくんの勢いにびっくりして
動けなかったけど、その手を見てハッとした。

私はそっとすばるくんの手に触れた。

すばるくんは振り払う事もなく動かない。

そっと手を開かせて手を握りしめる。

「大事なギターを弾く手だよ。」

そう言って手を優しく包み込んだ。

「何も無駄じゃない。すばるくんが今まで頑張ってきた事も。
　私が傷ついた事も。すばるくんが苦しんでる今も。」

私はすばるくを見つめながら言った。

「なにひとつ渋谷すばるは間違ってない。」

「私ね…今歌ってるの。
　歌ってる時、すばるくんのことばっか思い出してたんだ。
　今度見にきて。」

　そう言ってカバンから、お店の名刺を出した。

　「週1回くらいなんだけど、待ってるから。」