ホールケーキはお好き？ ページ49
にぱっと頬を上気させるAの発言にマレウスの周りの空気がやや固まる。
「……そうか。ホールケーキか？」
「これ、マレウス。Aが一生懸命作ったんじゃ。
…それに、Aがお主のことを"呼ばない"わけがないじゃろう？」
眉を潜めて嫌なことでも思い出したと言わん表情をするマレウスをリリアが嗜める。
「おにいさまやリリア、セベクにシルバー、みんなでたべたいなって…ダメ？」
不安げにその瞳は揺れて、お揃いの瞳とかち合う。そんな妹の目に負けたマレウスは、根負けしたように目を瞑ると大きく息を吐いた。
「…ダメなわけない。ただすこし、」
苦手なだけだ。その言葉は口から出ることはなかったがリリアには言わんとすることが分かったようで、マレウスの肩を軽く叩いた。
「さて、夕餉の時間じゃ。お楽しみのAお手製タルトはその後にしよう」
「わーい！A、おなかペコペコなの！」
「本日は特別に談話室で夕食としましょうか」
シルバーがそう言うと、Aはマレウスの膝から降りるとぴょんぴょんと跳ねた。お楽しみの晩餐会はこれからである。
談話室で夕食を取り終えてお腹も落ち着いてきた頃、Aは革張りのソファの上でそわそわと落ち着きが無くなっていた。皆と一緒に作ったタルトは美味しい…と思う。たぶんだ。しかし、肝心の兄が喜んでくれなかったら？と思うとなんだか元気が無くなってきてしまった。
「どうした、A」
突然の兄の声にびくりと体を震わせる。急に様子のおかしくなった妹が心配で声をかけたつもりだったが、何故かさらに元気を無くしてしまいマレウスも対応に困ってしまう。
「体調でも悪いのか？……A、何か申してみよ」
その言葉を皮切りに、ぽつりぽつり、と肌触りの良い黒のワンピースに染みができていく。一度悪いことを考えてしまうと、中々そこから抜け出せない。作ったケーキが兄を始め、誰にも喜んでもらえなかったら？だってさっきのお兄様、少し変な顔をしていたもの。きっとケーキなんて。そう思うだけで悲しくて涙が止まらない。急に泣き出してしまったAを見てギョッとした四人は慌てふためく。
「ど、どどど、どうされましたか！？A様？！！」
「…ぅう…つくったケーキ……よろこんでもらえなかったら…っておもって…うう〜〜」
再び泣き出したAを見たマレウスは徐に立ち上がると箱に詰まったマロンタルトに手をかけたのだった。
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礼(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。自己満足の域を出ない私の文章に対してそんな風に言っていただけて嬉しいです。早いもので続編に行きましたので、今後もお暇な時のお供にしていただけたら幸いです。 (2020年5月23日 15時) (
レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 失礼...ごほん...主様語彙力たっかっっっ？！ディアソムニアの小説少ない中でこんな神作あるの幸運過ぎやしませんかァァっっ？！？！幼女ちゃん可愛い！めっちゃ可愛いっっ！読んでてほわほわするし神作って断言できますっっ私が保証しますっっ (2020年5月23日 4時) (レス) id: d92bf3fc5b (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます。ディアソムニア素敵ですよね。カードが未実装キャラもいるので中々小説見かけませんよね（ ; ; ）嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張りますので今後もよろしくお願いいたします。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - 雪猫と葛さん» コメントありがとうございます！主人公ちゃんのことを愛してくれて嬉しい限りです(^-^)今後も少しずつ更新するので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
アリス - ディアソムニア良い…！！！ディアソムニアってまだ本編更新されてないせいか、小説少ないですよね、、、。この小説あって良かった…！！夢主ちゃん可愛いし…！！更新頑張ってください！！ (2020年5月17日 22時) (レス) id: a926bdc47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：礼 | 作成日時：2020年4月26日 7時
