妖精族の末裔ちゃん

ライオンとハイエナ ページ41

学園裏の森に辿り着くとそこには既にエースとデュースが立っていた。


「おっせーよ！何やってたんだよ！」


エースが不機嫌そうに吠えるとユウはごめんごめんと顔の前で手を合わせる。


「Aも一緒にケーキ作り手伝ってくれるんだな」


グリムと並んだAの姿に気づいたデュースがしゃがみ込むと偉いな、と頭を撫でてくれる。革手袋越しに感じられる温もりが気持ち良くてAは目を細めた。


森には多くの栗が落ちているが、素手で拾い集めることはトゲが刺さって危ないことから、一行は近くの植物園にカゴやトングを借りに行くことにした。


ガラス張りでドーム状の植物園が日の光を反射してキラキラと輝いている。そこへと続く数段の石階段を登り、硝子の引き戸を開けて中へと入る。そして温度調節のされた生暖かい空気が肌を撫でる。目を向けるとそこには鮮やかで色とりどりの植物たちが生き生きとしている。彼らは手分けして広い植物園の中からカゴとトングを探すことにしたのだった。


城では見たこともない植物たちに興味津々のAはユウに手を繋がれながら辺りをキョロキョロと見回している。するとユウは何か踏んでしまったと感触と共にAが視界から消えて驚く。そう、Aもユウと並列して歩いていたため、自分と同時に"何か"を踏んで転けてしまったのだ。


「___いって！？」


「ひゃっ！！」


ぽすんと視界から消えたAが倒れ込んだ先はどうやら痛みに顔をしかめた男性の上であった。Aに怪我が無いようでほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、自分の上に倒れ込んだAを認めると心底面倒臭そうな顔をして、大きな溜息をついた。


「おいA、下りろ。」


「…いたた、レオナ？」


Aはレオナの体に跨り彼の胸から顔をあげると、ダルそうな顔を見ると、レオナだわ！とパァと顔を綻ばせる。そんな子供の明るい表情を見るや否や、自分の記憶の中にいる子ライオンがちらつき、頬をひきつらせる。頭の中で鳴り響く、"おじたん！"という甲高い声に頭を痛めながらも案外優しい手つきで、自らの上に乗ったままのAを退かしてゆるりと立ち上がる。


そして今にも噛み殺さんと言わんばかりの視線を向けて、悪態をついてきたレオナにたじたじのユウとグリムが抱き合って震えていると少し高めの男子の声がレオナを呼び止める。


「レオナさーん！」


ダボダボのブレザーを揺らして颯爽と現れたのは活発な印象を与える男の子だった。

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