どこまでも無垢(2) ページ39
愛おしい娘の決壊した雫を指で拭うと、閉じた瞼からちらりと少し赤みがかったエメラルドが覗く。
「A、すまなかった。…さっきの言葉は取り消そう。」
「……ほんとう？リリア、Aのことキライになってない？」
剣呑な雰囲気は一変して柔らかく形を変える。そんな空気に従者達はほっと胸を撫で下ろした。
「もちろんじゃ。」
いつもの笑顔を浮かべるリリアに安心したAは、声を上げて今度は安堵の涙を溢す。そんな様子のAにこれこれ泣くでない、と溢れ落ちる雫に舌先を這わせるとその雫の出処である目尻に唇を落とす。
「Aの涙は甘いのぉ…」
恍惚と舌舐めずりするリリアのそんな行動にびっくりしたAは、大きく目を見開く。その拍子に縁に残っていた涙がキラキラと舞う。すっかりと涙は止まったようである。
「…して、A。ケーキ作りとやらに行ってよいぞ。じゃが決して一人にならないと約束できるかの？」
Aにはこの言葉が先程とは違って、しっかりと許可の取れたことを示していることが分かる。嬉しさが体から溢れてしまいそうで、もちろんよ！と答えると思わずリリアに抱きついてしまう。
「お言葉ですがリリア様、良いのですか？第一、若様がお許しになるか…」
「マレウスへはわしが話をつけよう。あのときのような悲しい思いをしたくない、というわしらのエゴでAの成長を妨げてはいかん。向こうにもよくAのことを見ておくよう"よろしく伝えておく"つもりじゃ」
セベクの心配を分かっているとでも言わんばかりに、どうしてやる事が最善か、何がAのためなのかを述べると娘の頭を撫でる。
「シルバーすまぬが、食器の片付けを頼んでも良いか？」
「お安い御用です。A様を頼みます。」
そう言い残してリリアやAの使った食器を机上でまとめると席を立つ。
「A様、ケーキ作り楽しまれてくださいね。」
「うん！つくったケーキもらえたら、シルバーにももってくるね！」
少し赤みの残る目元をふにゃりと細めたAが愛おしくて、さっきのリリアが少し羨ましくて、Aの無垢で汚れないところに焦がれたシルバーは思わず、自らの唇をふにっとリリアとは逆の目尻に優しく押し当てる。
「上手くいくようにおまじないです」
「シ、シシ、シルバー！？貴様、不敬だぞ！？！A様の御顔に接吻などっ…」
真っ赤になったセベクがちょっぴり羨ましいと感じていたりいなかったり。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1486人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
礼(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。自己満足の域を出ない私の文章に対してそんな風に言っていただけて嬉しいです。早いもので続編に行きましたので、今後もお暇な時のお供にしていただけたら幸いです。 (2020年5月23日 15時) (
レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 失礼...ごほん...主様語彙力たっかっっっ？！ディアソムニアの小説少ない中でこんな神作あるの幸運過ぎやしませんかァァっっ？！？！幼女ちゃん可愛い！めっちゃ可愛いっっ！読んでてほわほわするし神作って断言できますっっ私が保証しますっっ (2020年5月23日 4時) (レス) id: d92bf3fc5b (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます。ディアソムニア素敵ですよね。カードが未実装キャラもいるので中々小説見かけませんよね（ ; ; ）嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張りますので今後もよろしくお願いいたします。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - 雪猫と葛さん» コメントありがとうございます！主人公ちゃんのことを愛してくれて嬉しい限りです(^-^)今後も少しずつ更新するので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
アリス - ディアソムニア良い…！！！ディアソムニアってまだ本編更新されてないせいか、小説少ないですよね、、、。この小説あって良かった…！！夢主ちゃん可愛いし…！！更新頑張ってください！！ (2020年5月17日 22時) (レス) id: a926bdc47b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：礼 | 作成日時：2020年4月26日 7時
