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過去(2) ページ36

色とりどりの草花が風に揺れ、豊かな緑の葉が擦れる音がする穏やかな森には、小さな女の子の笑い声が響き渡った。森に住む妖精達は、そんな女の子____Aと戯れるように森を駆け、飛び回っていた。


平穏な日々を送る中、Aはいつも遊んでくれる妖精達を"おともだち"と呼び毎日のように城を抜け出しては自分の話を聞かせたり、妖精による素敵な魔法に胸を躍らせた。





それはよく晴れた日のことであった。今日も城を抜け出したAは妖精達と森を駆け回っていた。いつもなら日が傾いてきた頃にお城へと戻るのだが、今日は違った。ある妖精から"一等綺麗な夕日の見られる場所へ行こう"と誘われていたのである。


リリアからの言いつけ__日が沈む前に戻ってくるように__をずっと守ってきたAだからこそ、森で遊ぶことを許されてきたのだ。しかし、仲良くなった妖精(お友達)からの素敵なお誘いを断ってしまうことは、心優しいAには出来なかった。素敵な夕日を見たらすぐに帰って、リリアに謝ろう。そして皆に素敵な夕日を見た話をしよう、そんなことを考えていた。


妖精達に先導されて、いつもは入ったことなどない森の険しい道を行く。


「すこしこわいわ…」


妖精は、可愛らしい羽をはためかせてAに一度すり寄ると着いてこい、と言わんばかりに先を急いだ。


「あっ…!まって!」


Aは急いで妖精達のその背中を見失わないように追いかけた。



ここは遥か昔妖精の国が人間と対立していた頃から存在しているといわれている森。そんな争いの跡が残る場所は今となってはほとんど無いとはいえ、争いがあったことは事実であり、史実だ。


目の前を浮かんでいる妖精に目を奪われていたAは自らの足元で口を開ける大穴に気がつかなったのである。もう少し、あともう少しで其の美しい焔を自らのエメラルドに映すことが叶う。そのはずだった。美しき翠玉に映り込んだのは、光の差し込まない暗闇であった。


「きゃっ…!?…やぁああぁああ…」


戦禍によって形作られた深い穴に落ちたAの悲鳴はどんどん小さくなって終には何も聞こえなくなってしまう。


Aの悲鳴を聞いた妖精達は大慌てで城へと大穴へと分かれていく。城へと向かった妖精は、マレウスやリリアや使用人に緊急事態であることを伝える。一方で大穴へと入った妖精達は愛おしいAの安否を確かめようと必死であった。



幼い姫は冷たく昏い土の下へ。美しき夕日は沈もうとしていた。

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(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。自己満足の域を出ない私の文章に対してそんな風に言っていただけて嬉しいです。早いもので続編に行きましたので、今後もお暇な時のお供にしていただけたら幸いです。 (2020年5月23日 15時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 失礼...ごほん...主様語彙力たっかっっっ?!ディアソムニアの小説少ない中でこんな神作あるの幸運過ぎやしませんかァァっっ?!?!幼女ちゃん可愛い!めっちゃ可愛いっっ!読んでてほわほわするし神作って断言できますっっ私が保証しますっっ (2020年5月23日 4時) (レス) id: d92bf3fc5b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます。ディアソムニア素敵ですよね。カードが未実装キャラもいるので中々小説見かけませんよね( ; ; )嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張りますので今後もよろしくお願いいたします。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 雪猫と葛さん» コメントありがとうございます!主人公ちゃんのことを愛してくれて嬉しい限りです(^-^)今後も少しずつ更新するので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
アリス - ディアソムニア良い…!!!ディアソムニアってまだ本編更新されてないせいか、小説少ないですよね、、、。この小説あって良かった…!!夢主ちゃん可愛いし…!!更新頑張ってください!! (2020年5月17日 22時) (レス) id: a926bdc47b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月26日 7時

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