気ままな午後(2) ページ18
ベンチの端に手を置いて、眠っている人の顔を覗き込む。深海に差し込む光を反映した海の青のような青髪に一房の黒髪が映えている。少し開いた口から覗くギザギザの歯は噛まれたら痛そうである。しばらく眺めていると、目の前の閉じられていた瞳が開かれる。その色の違う両目は気怠げに閉じては開いてを繰り返す。
「ん〜〜〜???」
「ひゃっ…」
急に目を開いたかと思えば、寝ぼけたまま声を上げた目の前の人物に驚いたAは、回れ右をして逃げようとした。
「なぁんで逃げようとするのぉ?…稚魚ちゃぁん」
「ぴえぇ……!」
獲物を目の前にしたウツボがひ弱な稚魚を見逃すはずもなく、長い尾で締められてしまう。
「ちっちぇし、あったかぁい……おやすみぃ…」
「ぁう…」
最初こそ知らない人間に抱きつかれて驚くも、痛いことも変なこともしてこないどころか自分を抱きしめて二度寝を決め込んだ張本人を見て、体の力が抜けるA。包まれた腕から伝わるやや低い体温と自分の体温がじわじわと交わって心地よくなってくる。
お昼を食べて満腹であること、歩き疲れたことも相まって徐々に瞼が落ちてくるA。兄を探したい気持ちもあるが、少しお休みするだけ、と温かな眠気にその身を委ねた。
「……おやすみぃ、稚魚ちゃん」
Aが眠ってから暫くして、ベンチに寝転んだ彼__オクタヴィネル寮2年、フロイド・リーチ__とよく似た男子学生__オクタヴィネル寮、副寮長、ジェイド・リーチ__が芝生を踏み鳴らしてやってくる。
「…おや、フロイドが起きているなんて…それに随分と珍しいお客様まで…どこで捕まえたんですか?」
「え〜〜?目の前でちっちゃい尾をパタパタして逃げようとするから、捕まえちゃっただけぇ♪」
ジェイドが現れると、ゆっくりとベンチから起き上がったフロイドはニヤニヤしながら、未だすやすやと眠っているAを抱き上げる。
「なぁ、ジェイド〜、この稚魚ちゃんアズールにも見せてやろうよぉ」
「それは良い考えですね。…ただ相当大事にされているとの噂を耳にしたので面倒事は避けたいところです」
「アズールがどうにかしてくれるっしょ♪」
そのアズールのワガママを聞いているのは自分だという言葉は飲み込んで、こうだと言い出したら聞かない片割れに仕方なく従って自分たちの寮を目指した。
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礼(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。自己満足の域を出ない私の文章に対してそんな風に言っていただけて嬉しいです。早いもので続編に行きましたので、今後もお暇な時のお供にしていただけたら幸いです。 (2020年5月23日 15時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 失礼...ごほん...主様語彙力たっかっっっ?!ディアソムニアの小説少ない中でこんな神作あるの幸運過ぎやしませんかァァっっ?!?!幼女ちゃん可愛い!めっちゃ可愛いっっ!読んでてほわほわするし神作って断言できますっっ私が保証しますっっ (2020年5月23日 4時) (レス) id: d92bf3fc5b (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます。ディアソムニア素敵ですよね。カードが未実装キャラもいるので中々小説見かけませんよね( ; ; )嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張りますので今後もよろしくお願いいたします。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - 雪猫と葛さん» コメントありがとうございます!主人公ちゃんのことを愛してくれて嬉しい限りです(^-^)今後も少しずつ更新するので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
アリス - ディアソムニア良い…!!!ディアソムニアってまだ本編更新されてないせいか、小説少ないですよね、、、。この小説あって良かった…!!夢主ちゃん可愛いし…!!更新頑張ってください!! (2020年5月17日 22時) (レス) id: a926bdc47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:礼 | 作成日時:2020年4月26日 7時