妖精族の末裔ちゃん

はじめてのじゅぎょう ページ11

恥ずかしそうにしながらも目を合わせるA。


「…Aです、よろしくおねがいします」


そう言うとしっかりとヴィルの前に出てペコリとお辞儀をする。幼いといえど、礼儀作法は基本中の基本であるため、たどたどしくも身についている。そんな姿に感心したヴィルは嬉しそうに目を細める。


「Aね、アタシのことは好きに呼んで頂戴。
ポムフィオーレ寮はAみたいな美しさを持つ子は大歓迎よ。いつでも遊びにいらっしゃい。」


自身の美への追求に余念の無いヴィルは、その美しさを存分に振りまいて自身の教室へと歩いて行った。


「とーってもドキドキしたわ！リリア、Aもヴィルのようにキレイになれるかな？」


「それは、Aの頑張り次第じゃな。さあマレウスを待たせておる。」


「うん！」


おにいさまー！！！と声を上げて駆けてゆく姿を見て、彼女の思い描く美しい淑女にはまだまだ遠いと感じたリリアであった。




ここナイトレイブンカレッジの授業は、主に魔法に関する歴史を学ぶ"魔法史"、箒の扱いを覚える"飛行術"、そして魔法薬の調合など物質の錬成を学ぶ"錬金術"の大きく３つに分かれる。Aにとっての初めての授業は、モーゼズ・トレイン先生による魔法史である。


威厳がありながらも落ち着いた声で魔法史について解説する授業は、生徒を眠りに誘うものであるようだ。何人かの頭がフラフラと揺れている。


マレウスはやや退屈そうにしながらもトレインの話を聞く。そんなマレウスの隣に座ったAは、最初の方こそ大人しく話を聞こうとしたが、小難しい言葉が多いため理解できず、勉強道具として持参してきたノートにお絵かきを始めてしまった。


マレウスが退屈そうに授業を聞いている横で上機嫌に絵を描いているAは、兄を始めとした親しい者たち、そして先程出会ったヴィルにトレインが抱いているルチウスを順番に描いていく。それらは決して上手いとは言えないが、それぞれの特徴をよく捉えている味のある絵である。


やっとルチウスを描きあげ、トレインを描き始めようとした時に授業の終わりを告げる鐘が鳴り響く。先程までとは打って変わってザワザワとした喧騒に包まれると、Aはマレウスに絵を見せる。


「おにいさまかいたの！じょうずにかけたの！」


「…この塊は？」


「これはせんせーのネコちゃん！」


真面目に授業を受けさせろというリリアのお小言が過ったが、妹を甘やかしてしまうマレウスであった。

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