16話 ページ16
それから毎日発声の練習を続け、エニシは拙いながらも言葉を話せるようにはなっていった
「アヴァロン！アヴァロン！」
「あぁそうだ。それが俺の名だ。」
「くろーのすは？」
「………それは俺の名ではないよ。忘れな」
「……？うん。」
(お父様！！行かないで！！)
「つっ……！！」
俺が神としての記憶を思い出してから数日後から、この声が止むことがない
俺の娘、ヘスティアの声
(クロノス！！置いていかないで！)
我が妻、レアの声
エニシと幸せな日々を過ごす度声が増してくる
俺はこのままでいいのか。全てを捨ててエニシと幸せに生きる、価値があるのか
「アヴァロン？」
「………はっ！」
「どうしたの？つらいの？」
……わからない
こんなことなら思い出すべきじゃなかった
思わずエニシを抱きしめる
そうだ。この子が今の俺の生涯だ
この子以上に大事にするものなど、無い
1度は捨てたんだ
今更戻れない……。
「アヴァロン。大好きだよ」
「………どうした、急に」
「ううん、伝えたかったの。アヴァロン、思い悩んでたから、何か言わないとって」
「……ふふっ、ありがとうな」
エニシを離し感謝を告げる
まだ会って数週間だ
なのに、この子はどんどん成長していく
それなのに俺はどうだ
停滞して、悩むだけだ。そんなので俺が幸せにできるのか……
「くん……アヴァロン……アヴァロンくん！！」
「……！？……カグツチ、か」
本当に考えすぎることが増えた
元々はこんな性格ではなかったはずだ
………感情を知ってしまったから、か
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作者名：ヨル | 作成日時：2022年1月22日 15時
