弐 ページ2
Aは体力の続く限り走った。小袖の裾を払い、路面の悪い森の中を駆ける。大人の男を背負い、何度も足をくじきそうになりながらも、一心不乱にタソガレドキ城下を目指した。
速度を落とすわけにはいかなかった。何者かの気配がずっと二人をつけていたのだ。味方か敵か。Aが気づいたときからずっと、何をする訳でもなく、ただ等しい距離を保っている。振り返っても姿は見えない。
(……忍か)
不気味な気配に注意を払いつつ、走り続けると、小川が見えてきた。タソガレドキ領内は目の前だ。
この時、Aはほんの一瞬気が緩んだ。気配が背後に迫ったことに気付いたときには、既に遅かった。一瞬の隙をつかれ、正面から首をギリギリと絞められる。
「ッぐぁ……!」
抵抗したいが、相手の目的が分からないまま、背中の男を落とすわけにはいかない。足は踏まれて動かない。霞む目に何とか捉えたのは、
包帯を巻いた独眼の大男。
「……くッ、お前は…………!」
「……曲者だよ」
Aは意識を手放した。
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スイちゃんのご友人のご友人 - 更新待機 面白かったです (2023年2月3日 1時) (レス) @page7 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
水無月弥生(プロフ) - 更新楽しみにしています!これからも頑張ってください。 (2020年4月4日 19時) (レス) id: 9fe8b56f99 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十夜 | 作成日時:2020年3月24日 23時