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「見てルド!」
約10分後、はしゃいでいるエルが食堂に戻ってきた。
何やら、手に武器のようなものをつけている。
「なにそれ。爪?」
「女神がくれた!えっと、確か…」
「“見えない射爪”です。」
続けてパルテナさまも戻ってきた。
「ピットのお古ですが…あなたに神器を授けていなかったので。」
「戦わせてくれなかったもんな。」
見えない射爪は、名前の通り見えない、というか見えにくい透明な針のような鋭い爪が生えている。
「撃剣、神弓、狙杖…他にも様々な種類の神器がありますが、エルイダには射爪が似合うと思ったのですよ。」
似合う、だけで決めていいほど扱いは簡単なのだろうか。
「出発前に射撃場で練習なさい。その神器で、フィヨルドを守るのですよ。」
「おう!」
パルテナさまに元気よく返事をしたエルは、颯爽と食堂から出て行った。
その姿は、いつもの大人びた態度や言動とは打って変わって、すごく子供らしかった。
「無邪気ですね。」
「あんなエル、見たことない。」
あれがエルの本来の姿なんだと思う。
昨日の夜に彼が言っていたみたいに、エルはパルテナ軍に所属してから家族がいるという幸せを取り戻している。
「エルはあなたをお母さんみたいだと言ってた。」
「まあ、それは名誉なことです。」
パルテナさまは嬉しそうに笑う。
「…パルテナさま、もう1枚トーストをもらえませんか?」
「あら、まだ食べたいのですか?」
「私が食べるんじゃない。ブラピの分。きっと私よりずっとお腹を空かせているから、目が覚めたらすぐに食べられるように…」
また、笑った。
そして私の頭を優しく撫でると、キッチンからトーストを1枚持ってきて来れた。
「持って行ってあげなさい。」
「ありがとう!」
トーストを受け取って、ブラピが眠る部屋に戻ってきた。
当然だけど、まだ目を覚ましていない。
ブラピの側に座って、お皿に乗ったトーストを置いた。
「起きたら食べてね。」
返事はない。表情ひとつ変えない。
当たり前だけど、やっぱり寂しい。
「私、今からピットを助けに行くんだよ。無事に戻ってきたら、あなたは褒めてくれる…かな。」
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•:*+.ユミ.+*:• - 夢主の、本名がわかった途端、鳥肌が立ちました‼️これから、どうやって物語が進んでいくのか、楽しみです😆😍 (2021年12月5日 23時) (レス) @page35 id: d5a0a5071d (このIDを非表示/違反報告)
きういち(プロフ) - みかんの缶詰さん» 回収できていないものもあるのですが、頑張って回収して行きたいと思います!ありがとうございます! (2021年8月12日 7時) (レス) id: 3cf9b90fb6 (このIDを非表示/違反報告)
きういち(プロフ) - うさ丸032さん» ありがとうございます!私自身もハラハラドキドキ展開が好きでつい詰め込みすぎてしまいますが…これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2021年8月12日 7時) (レス) id: 3cf9b90fb6 (このIDを非表示/違反報告)
みかんの缶詰 - きういちさんの小説は伏線回収が素晴らしすぎて、何度読み返しても全然飽きません!これからも楽しく読ませていただきます!そして、応援しています! (2021年8月11日 20時) (レス) id: a9da165b13 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸032(プロフ) - きういちさんの小説をずっと見ている者です!今回もとっても面白いかつドキドキする展開がまた僕にとっては面白さが湧き立ちます!きういちさん、ずっと応援しています!!頑張ってください!!! (2021年8月7日 14時) (レス) id: 8172536591 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きういち | 作成日時:2021年8月3日 13時