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いない。
建物のどこを探しても、人がいない。
人がいないのなら、当然ピットもいない。

建物の中は空気が悪いから、一旦外に出てきた。


「厄介だな…やっぱり移動してたのか。」


何か手がかりがないか、建物の周囲を観察した。

特に怪しい箇所は見当たらない。
隠し通路とか、秘密の部屋の入り口とかもない。

やっぱり、こことは別の場所にいる。



「手前は建物が密集してるのに、裏はすっからかんなんだな。」


ふと、エルが呟いた。

確かに、玄関側はレンガの通路があって明らかに人の手で施されている。

だけど建物の側面と裏側は、土の地面で全く手入れがされていない。

この建物は、もともとどんな施設だったのだろう。



「…ねえ、見てエル。」


側面の土の地面に、不自然に引かれた直線の窪みを見つけた。

エルはその窪みの前でしゃがむと、顔を近づけてまじまじと見た。


「これは…車輪の跡?」


窪みが続く先は、建造物が少なく道幅が広い。
馬車が通るには十分な道がある。

もしかしたら、ピットは馬車に乗せられて遠くへ連れて行かれたのかもしれない。


「跡を追おう。」

「これがピット追跡の手がかりだとは限らないだろ?」

「他に手がかりがないのなら、今目の前にあるものを信じるしかない。」


一度離していたエルの手をまた握り、車輪の跡を辿って歩き始めた。


土の地面は泥濘んでいて、足がとられて歩きにくい。
躓いて転びそうになった所を、エルが腕を引っ張って食い止めてくれた。


「あーあ、おれにも翼が生えてりゃ、こんなのひとっ飛びなのに。」

「翼があっても必ず飛べるわけじゃない。」


私の言葉に、エルは苦笑いをした。


「でもまあ、おれたち人間にとっては、飛べる飛べないにしても翼は憧れだよ。」

「寝る時仰向けになれないと思う。」

「確かに寝違えそうだな…」


こんなに緊張感のない話をしていて良いのだろうか。

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•:*+.ユミ.+*:• - 夢主の、本名がわかった途端、鳥肌が立ちました‼️これから、どうやって物語が進んでいくのか、楽しみです😆😍 (2021年12月5日 23時) (レス) @page35 id: d5a0a5071d (このIDを非表示/違反報告)
きういち(プロフ) - みかんの缶詰さん» 回収できていないものもあるのですが、頑張って回収して行きたいと思います!ありがとうございます! (2021年8月12日 7時) (レス) id: 3cf9b90fb6 (このIDを非表示/違反報告)
きういち(プロフ) - うさ丸032さん» ありがとうございます!私自身もハラハラドキドキ展開が好きでつい詰め込みすぎてしまいますが…これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2021年8月12日 7時) (レス) id: 3cf9b90fb6 (このIDを非表示/違反報告)
みかんの缶詰 - きういちさんの小説は伏線回収が素晴らしすぎて、何度読み返しても全然飽きません!これからも楽しく読ませていただきます!そして、応援しています! (2021年8月11日 20時) (レス) id: a9da165b13 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸032(プロフ) - きういちさんの小説をずっと見ている者です!今回もとっても面白いかつドキドキする展開がまた僕にとっては面白さが湧き立ちます!きういちさん、ずっと応援しています!!頑張ってください!!! (2021年8月7日 14時) (レス) id: 8172536591 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きういち | 作成日時:2021年8月3日 13時

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