宝石とボロ布 -1- (ページ10)

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ブラピは私をしばらく見ると、懐から私が手にしていたナイフを取り出した。

最後に見たときには血塗れで汚れていたそのナイフは、今ではすっかり綺麗になっている。

「こんなに劣化した刃で喉を切り裂かれたお前の主人はさぞ苦しんだだろうな。」

そう言われて、あの男の最期が頭に蘇った。

すごく痛そうで苦しそうだったけど、その姿を見て清々している自分がいた。

人の命を奪うことは罪。
だけど、私は何度も何度も自由を奪われた。

昨日までの私は、命があるだけのただの操り人形。
名前を奪われ、体を奪われ、人生を奪われた。

それは、死よりも辛い。

「私をボロ布のように扱ったのはあの男だけじゃない。」

「復讐の快感を覚えたか。」

ブラピは不敵な笑みを浮かべると、ナイフを渡してきた。

自由が欲しいのなら、自分でどうにかするしかない。

「ストォーップ！待った待った！」

「はぁ…本当にくどい奴だな…」

突然、草むらからピットが乱入してきた。

「ちょっとブラピ！女の子にそんな物騒な事企ませちゃダメだろ！」

「じゃあこいつが男だったらいいのか？」

「そういう問題じゃなくてさぁ…」

戸惑う顔をしたピットは、私からナイフを取り上げた。

「これはボクが預かりますからね！代わりに…ほら、これあげるから。」

そう言って私の手に無理矢理握らせたのは、大玉の飴一粒だった。

何年と見ていなかった、可愛らしく包装された飴。

今すぐ食べたいという欲を抑えきれず、包装から飴を取り出し、日の光にかざした。

宝石のように、輝いている。

「綺麗…」

その美しさを目にし、思わず笑みが溢れた。

「あ、笑った！」

惜しむ事なく、口へ運んだ。
甘酸っぱい味が、口の中に広がってくる。

これは…何の味だろう？
…何でもいい。

「すごい幸せそうな顔するね。」

「たかが砂糖の塊で、か。」

「たかが飴されど飴だよ。ほら、君にもあげる。」

「いらん！さっさと帰れ！」

甘味に癒され、復讐の気分が少し和らいだ気がした。