宝石とボロ布 -1- (ページ49)

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「おかーさんと手繋いでたのに…いなくなっちゃった…」

この子は迷子だったらしい。
誘拐じゃなくて安心した。

「アホか！お前まで迷ったらまた面倒な事になるだろ！」

私を追いかけてきたブラピに、腕を引っ張られた。

「まってブラピ、この子を助けたい。」

「どう助けるんだよ。この人混みに突っ込んでこいつの親を探すってのか？」

「うん！」

一瞬私を嫌そうな目で見て、ため息を吐いた。
そして、しばらく睨んで私の両頬を抓った。

「自分から獲物になってどうするんだよ。」

「らいおーぶ、いーかんがえがあうかあ。」

「はぁ？なんだよそれ…」

頬を離してくれたから、考えた策を話した。

「羽衣で長い髪を隠す。…ほら、男の子みたいでしょ？」

「強引すぎるだろ…全然良い考えじゃねーよ。」

「じゃあいっそ髪切る。あの剣貸して！」

「バカ。髪型を変えただけで別人になれる訳ないだろ。」

やっぱり、私にはどうすることもできないのだろうか…
この男の子の不安を無くすために、お母さんと再会させてあげたい。
ただそれだけなのに…

「…あ！おかーさん！」

お母さんを見つけたらしく、男の子は人の波に入っていった。

無事にお母さんの元へ辿り着けるか心配だったから、私もその子の後を追った。

「おい！待てって！」

ごめんブラピ。
私はどうしても、この子の力になりたいんだ。

「おかーさん！」

夢中で走って追いかけた末、男の子はお母さんと思しき女の人に抱きついた。

女の人はそれに気づいて、振り向いて一言。

「だあれ？」

「おかーさん…じゃない…」

ただのそっくりさん…だったらしい。

「坊や、迷子？」

「うん…」

「そう…じゃあおばさんと一緒にお母さん探そっか。」

女の人は男の子に手を差し出すと、男の子は頷いてその手を取った。

大丈夫かな。
あの女の人は怪しい人じゃなさそうだけど…

いや、大丈夫。
私みたいな子供より、立派な大人の方があの子を助けられる。

「私、用済みになっちゃった。」

後ろを向いて、追ってきたブラピに話しかけた。

「…あれ、ブラピ？」

いない。
右にも左にも、ブラピは見当たらない。

今度は私が迷子になっちゃった。