宝石とボロ布 -1- (ページ47)

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～47 ブラピside ページ47

「ブラピ、ネコ！」

フィヨルドを護衛し始めて、どれくらい経っただろうか。

2か月？3か月？…いや、半年？
さすがにそんなには経っていないか…

今のフィヨルドは、出会ったばかりの頃のフィヨルドとは大分変わった。

意思を示し、物に興味を持ち、よく喋る。
表情もかなり緩んできた。

この間なんて、オレがフィヨルドの髪留めを無くしたからって3日は口を聞いてくれなかった。
無事見つけ出して、やっと喋るようになったが…

それくらい、人間らしさが戻ってきた。

オレがフィヨルドに求めていたものは喜怒哀楽。
喜ぶ顔を見た。
怒る声を聞いた。
無邪気にはしゃぐ様子も見た。

だが、「哀」は未だ見れていない。

派手に転んでも喚かない。体のどこかが痛くても涙を流さない。

あとひとつ。
フィヨルドの喜怒哀楽を確認するには、哀がまだ足りない。

「おまえ、どこからきたの？飼い主はいるの？」

「引っ掻かれるぞ。離してやれ。」

女を泣かせる悪趣味などオレにはないが、フィヨルドの悲哀に満ちた泣き顔…見てみたい。

「ねえ、私街に行ってみたい。」

「はぁ？アホか、どこでお前を狙っている野郎どもと遭遇するかわからないんだぜ？」

「森はもう飽きた。緑ばっかで。」

子供で言えば、反抗期か…

『すっかり危機感を忘れておるな。やはり人類とは愚かじゃ。猿の方がよっぽどマシじゃな。』

自然を侮辱されて悔しかったのか、フィヨルドの話を聞いていたナチュレは皮肉を込めて言った。

まあ…身を守るためとはいえ、流石に何ヶ月も自然の中に閉じこもるのは、文明を知っている人間にとっては退屈だろう。

「半日…半日だけだぞ。」

「いいの？」

「後でごちゃごちゃ言われるのも嫌だから。」

「ありがとうブラピ！」

オレも随分、甘くなったな…