宝石とボロ布 -1- (ページ11)

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ピットは、私にありったけの飴を渡してどこかへ帰った。

「いち、にい、さん、よん…」

まともに数えたら、全部で24粒あった。
これだけあれば、いつでもあの甘酸っぱい味を堪能できる。

自然と広角が上がってしまう。

「初めて見せる笑顔の発端は、ただの飴か。」

普通の人にはただの飴でも、私にとっては宝石のようなもの。

「変なやつだな。」

「みんなに分けてあげたいな…」

「みんな？」

ブラピは不思議そうな顔で私を見て問う。

「孤児院にいた時の子供たち。孤児院といっても、みんな誘拐されて集められた可哀想な子供だけど。」

私もその、可哀想な子供の1人。

過去を思い出したら落ち着いていた復讐心が薄々戻ってきたから、咄嗟に飴を一粒口に入れた。

美味しい。

「お前、復讐したくないのか？お前とその子供の自由を奪った奴らによ。」

「したいよ。」

素直に答えると、ブラピは眉をひそめた。
飴を左頬側に持って行き、話を続けた。

「自分の金稼ぎの為に、何の罪もない子供を拐って、赤の他人の所に売り飛ばすんだから。孤児院にいたのはほとんど女の子。私もされたみたいに、体が目的で孤児を求める大人もいる。」

あの男の顔、声、呼吸、言葉を思い出してしまった。

憎悪と恨みが増え、口に入れていた飴を噛み砕いた。

「そういう下衆な人間を…この世界から消したい。」

「ふぅん…」

ブラピは鼻で笑って、私の顎に手を当て上に上げた。

「喜怒は見えた。あとは哀楽。」

「えっ？」

「全部オレに見せたら、お前の復讐、加勢してやる。」

全部、見せたら？
それってつまり…

「ちょっと待って、今脱ぐから。」

「は、はぁ！？」

「全部って、そういうことだよね？」

「馬鹿！ちげーよ！」

ブラピは焦って服を脱ごうとする私の手を掴んで止めた。

ブラピが言っていた「全部」は、私の感情。
つまり、喜怒哀楽のことだったみたい。

「お前の感情はまだ生きている。」

「そうなんだ。」

私の感情なんて、とうの昔に消えたものだと思っていた。

…そっか。
この復讐心も、飴を食べた時の自然に出た笑顔も、私の感情なんだ。

「感情って何なのか、忘れてた。」

「無理もねぇな。」