〘47〙再会 ページ2
*
「失礼します」
「あ、いらっしゃいませ!」
優さんとともに探偵社に入ると、白髪の少年が私達を出迎えた。
この探偵社は、一回に喫茶店があり、先程店内をちらりと見ると社員であろう男性が寛いでいた。平和な世界だなぁ、とぼんやりした頭で考えた記憶は新しい。
少年に席へと案内される途中、どこか見覚えのある糸目の少年が視界の端に映った。確かあの少年は、と考えているうちに席に促された。
「それでは、本日はどのような要件でしょうか?」
『はい。実は、大戦期に別れた母を探して欲しいのですが…』
「なるほど。それでは、なにか手がかり等は…」
『母の家系が使っていた、という嫁入り道具と母直筆の手紙、写真、あとは関係があるかどうかはわからないのですが、生前の兄が送ってきた手紙ですかね』
鞄の中から持ってきていた書類等々を取り出す。少年…中島敦くんは感嘆を漏らした。
「やあやあ!久しぶりじゃあないか!」
先程見覚えがあった少年が棒付きキャンディを咥えながらこちらの方へとやってきた。にこにこと楽しそうな笑顔はどこか条野さんのようだな、とも思った。系統は随分と違うか。
『君は…ああ、天才探偵江戸川乱歩君、だっけ?』
「そうそう!久しぶりだねぇ!それでそれで?誰を探せば良いんだい?」
『検討はついているでしょうけど…。私の母です』
先程までにこやかだった少年がすん、と大人しくなった。君にはもう見えているのか。
『大丈夫です。どんな結果だろうと受け入れる覚悟はありますから』
私がそう言うと同時に、「戻ッたよ」と声が聞こえてきた。
どこか聞いたことのあるような声に弾かれるようにその方向を見た。そこには、黄金色の蝶の髪飾りをつけた──。
「アンタ、まさか……」
『蝶の、少女』
「軍人の姐、さん…?」
私達は目を丸くしながらぽつり、ぽつりと言葉を紡いだ。
少し紫がかったピンク色の瞳が揺れた。ビニール袋を机の上に置くと、彼女は私の元へ走ってきて手を握った。
「良かッた、アンタが、っ─────」
握られていた手が震えている。彼女はその瞳に大きな雫を溜めて笑った。
『幸せそうで良かった』
──あきちゃん、と彼女の頭を撫でる。さらりと流れる髪は、あの頃よりも美しく輝いていた。
私も思わず涙がこぼれた。涙脆くなっていけないな、と少し霞む視界の中で考えた。
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ぺぺいペイペイ - んんん大好きぃ… (9月25日 11時) (レス) @page14 id: 574270cb2a (このIDを非表示/違反報告)
柏よもぎ(プロフ) - ハコ28さん» ありがとうございます!現在誠意製作中ですのでこれからもよろしくおねがいします (2023年4月3日 9時) (レス) id: 3dd860d531 (このIDを非表示/違反報告)
ハコ28 - とっても面白いです。続きを楽しみに待ってます (2023年4月2日 21時) (レス) id: 2c42bd39d0 (このIDを非表示/違反報告)
柏よもぎ(プロフ) - つゆこさん» ありがとうございます〜〜!!!これからも頑張っていきます!!✨ (2023年2月18日 21時) (レス) id: 541650209c (このIDを非表示/違反報告)
つゆこ(プロフ) - 第二幕おめでとうございます!!この小説も大好きです、ずっと待ってました!更新待ってます!((私は福地殿嫌いじゃないですよ!)) (2023年2月18日 9時) (レス) id: 655992e81c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柏よもぎ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/ichigo15ca1/
作成日時:2023年1月30日 16時